私は
思ったことを そのまま 口に出して
言ってしまった
先生
いったい どんな魔法を使ったんですか
すると 先生は
いやあ
僕 魔法学校じゃなくて
医大卒だからねえ
魔法は使えないんですよ
意外にも
ノリのいい返事をして
続けて 言った
だから 今日
いくつか 検査をして
調べようとしていたんだけど
でも
これだけ歩けるなら
もう検査は 必要ないですね
顔色もいいし
在宅で
鎮痛剤で 十分対応できると思います
パンパカパ~ン!
なんと!
夕方の入院から わずか半日で
母は
まさかの 退院宣告を
受けてしまったのだった
そして 先生は
入院時に撮った レントゲンで
背骨に 僅かな骨折痕が
認められるので
胴体を固定する コルセットを
お渡しします
ちょっと苦しいですけど
それを使ったほうが
痛みが軽くなるし
治りも早い と思いますよ
と 簡単な現状の説明をし
その後
にこやかな笑顔と共に
今 ご一緒に帰られますか
と 疑問形ながら
ニュアンス的には 明白な
即帰れコールを
ぶっ込んできた
はぁ?
私は
一晩かけて準備した
紙袋2つの荷物を 手にぶら下げたまま
混乱する頭から
それでも 最低限の言うべき言葉を
絞り出した
それは
無理です
私
病院まで 自転車で来てるので
だって
こんな展開になるとは
思ってもいなかった
むしろ
家に帰ってから
今日は 日頃 母がいたらできない
あれをして これをして…
と いろいろ考えていた
午後 車で出直します
とだけ 言い残して
帰ってきた
家に戻り
コーヒーを飲みながら
私は
今日 病院であったことを
反芻した
今朝 母は立ちあがり
数歩 歩けた
それは 事実だ
先生がおっしゃっていた
母の背骨には
僅かな圧迫骨折痕が 認められた
痛みの原因は その骨折によるもの
鎮痛剤とコルセットで
上手に 痛みをコントロールすれば
在宅で 治療は可能
ということも 理解できた
では
何故 今まで
鎮痛剤を使っても
痛みが どんどん強くなっていき
食欲が落ち 体力が落ち
動けなくなっていったのか
あの時 歩けたのは
母の
家に帰りたい という
強い気持ちが生んだ
瞬間風速的な 奇跡に近いもの
だったのか
だとしたら
気持ちが生んだ 奇跡は
気持ちによって
また 消え去ることだって
あるのでは?
そういったモヤモヤを
残したまま
母の入院は わずか1泊の
厳密に言えば
夕方から昼までの 20時間ほどで
終わったのだった
その日の午後
私は 再度
病院に 母を迎えに行き
退院手続きの書類などを
受け取って
帰ってきた
そして
家で
それらの書類に 目を通していた時
これにも また
ちょっとモヤってしまった
入院中
利用したタオルと パジャマは
それぞれ 1枚づつ
オムツのサブスクは
先ずは 慣れてるオムツから
ということで
看護師さんは
自宅から持ち込んだものを
使用していた
でも いづれも
規約により
昨日と今日の 2日分の料金が
請求される と書いてあった
まあ そういうものなんだろうけど
どうやら 私
ショーゲキの
母の 20時間での退院で
気持ちが
モヤモヤムーブに なってしまってるみたいだ

