これは 実話です
 
 
 
先日
スーパーで 買いものをして
20メートルほど 歩いたところで
歩道のド真ん中に
落ちている それを 発見した
 
 
その時間
辺りは すっかり 暗くなってたので
街灯があるにしても
それは
黒い物体としてしか 見えなかった
 
ので
 
私が う〇こに 見間違えたのも
しょうがない と 思う
 
 
でも
近づいて よくよく見たら それは
きゅうりだった
 
 
拾いあげてみた
 
 
まっすぐで トゲトゲして 新鮮そうで
見るからに おいしそうだった
 
 
これを どうするか
 
きゅうりを手に 私は しばし悩んだ
 
 
このまま
落ちてた場所に 放置するか
 
そしたら 遅かれ早かれ 誰かに踏まれて
その瞬間 ゴミと化す
 
 
道の端に移動して 置いておくか
 
そしたら 踏まれはしないだろうが
誰にも気づかれないまま
2~3日放置され 干からびて
やはり ゴミ箱行きだろう
 
 
では どうする?
 
 
私は
日頃ありえないくらいの スピードで
考えを巡らせた
 
 
そもそも
なぜ きゅうりが 路上にあったのか
 
 
たぶん これは
そこのスーパーで 売ってた きゅうりだ
 
誰かが買って これを持って帰る 途中
落とした
 
もし その人が
その場で 落としたことに 気が付いたら
もちろん 拾って
再度 袋に入れただろう
 
でも 気が付かなかった
 
そして そのまま 路上にあった
 
 
 
誰かが
悪意をもって そこに置いた可能性も
否定は   できない
 
例えば 無差別殺人を狙って
人体に有害な化学物質を 塗った とか
 
でも そういう可能性を 考えるのなら
お店で売っている野菜も 同様だ
 
むしろ 悪意ある人にとっては
お店に売っているものに 塗ったほうが
確実に 人の口に入るだろう
 
 
 
どうするか 結論が出ないまま
考えあぐねていると
その時

きゅうりの声が 聞こえた
気がした
 
 
私を おうちに連れてって
 
 
 
 
私は この おいしそうなきゅうりを
どうしても ゴミにはしたくなかった
 
きゅうりとしての命を
全うさせてあげたかった
 
 
 
 
と いうワケで
家に 持って帰った
 
 
そして キッチンの天板に 置いた
 
やはり 立派なきゅうりだった
 
だけど
 
 
生で食べるには なんとなく抵抗があった
 
では 中華風に炒めて 食べるか
 
 
いや それはおかしい
 
連れてきたくせに
なぜ そんなふうに考えるのか
 
大丈夫だ
と 思っているなら
生で食べればいい
 
 
大丈夫ではない かもしれない
と 思っているのなら
 
捨てたらいい
 
 
 
私は 再度 悩み始めた
 
 その日は 結局
きゅうりは   キッチンに放置して
寝た
 
 
 
 
翌朝
 
それは 消えていた
 
 
同居している母が 冷蔵庫にしまったのかな
それとも
食べたのかな
 
と 思ったが
 
まあ いいや
母は変わりなく 生きている
 
 
そして きゅうりのことは
すっかり 頭から離れた
 
 
 
 
 
その日の夜
母が 誇らしげに言った
 
冬だけど   久しぶりに
あなたの好きな   ぬか漬けを漬けたわ

台所に
おいしそうなきゅうりが あったから
 
 
そして 私の目の前に
ぬか漬けに 姿を変えた
あの きゅうりが 出された
 
母親の   心尽くしのぬか漬けだ

私に   拒絶する選択肢は   ない
 

有難くいただいた
 
 
 
悩んだ あの時間は
一体 何だったのか
 
おいしかった