今年もコロナに負けず、そのイベントがやってきた……。
それに関係があるのかないのか今年は例年より1日前倒しの2月2日が節分で、2月3日が立春になっている。
さてこれも国民行事というかプチイベントととらえて、準備もまた楽しいものである。
用意する物は、先ず豆、そして恵方巻き、そして柊とイワシの頭。
方位計もいるな。……これはスマホに付いているコンパスでいいか。
今年の歳徳神さまは南南東におじゃる。来年は北北西だが。
それにオブー、お茶も要るだろうな。
今年の皆の願い事は大概読める。
コロナ早期収束し、マスクなしで自由に行動できて、東京オリンピックが成功し、経済が回復しますように!
ま、大体こんなところだろう。
しかしなぜ恵方巻きなんだ?キメツの刃のねずこのように竹輪を咥えたのではいかんのか?と言われても困ってしまうのである。
それは土用のうなぎや、バレンタインデーのチョコのように慣例法で微妙に商売や経済と関連しているからである。
しかしこの恵方巻きも無言で、一気に胃の腑に納められるか……。
充分な練習もしないでいきなりパクッとやって喉に詰まらせたりしないものだろうか?
あんなふっとい具だくさんな巻きずしを……。
と、不安だか懸念だかが、宵闇の走馬灯のようにせわしなく駆け巡るのである。
もし、万が一、途中で誰かに呼びかけられたりして、う、うっと喉につかえたりせんだろうか?
そうだ、その直前には、留守電やスマホ機内モードにしておこう。
呼び鈴もオフにして、部屋に鍵をかけておこう。
面会謝絶の札も貼るか。いや最近じゃ意味も分からん人がいるから逆に「これは何ですか?」と聞かれかねないので、「いまいません」の方がいいだろう。
お湯湧いたかな?
それでは、急須に玄米茶を大匙2杯分入れて、湯呑み2杯分の熱湯を注ぐ。
さてこれで準備は整った。まず検温、手洗い、うがい、消毒。
そしてスマホで南南東に間違いがないか、確かめて椅子の位置を合わせ、神妙な面持ちで、
軽く会釈。
これは研究論文発表と同じように、居並ぶ八百万の神様に「よろしくお願いします」という心がけだな。
さて準備ができたところで、いよいよ節分恵方巻きの儀式に入ります。
さっどちらさんもよろしゅうございますか?
ツボ入ります!
いや、マキ入りますっ!
オオ~と、嘆声が洩れる。
おもむろに、耳にかかったゴムを持ってマスクを取り外し、玄米茶で軽く舌や喉をうるおしておいて。
南南東に正対し奉り、深く礼!そして深呼吸。
左手には黒光りする口径45mm、長さ5寸の立派な恵方巻きが添えられている。
分かってると思うが、一旦口に入れたが最後、一気呵成に無言で食切る。いいな。
では、いざっ!
がぶっ、
うぐうぐっ。
ちゃんと願い事して喰ってるか?
うぐ、うぐっ
なにっ、願い事が多くて……
おおっとあぶない、黄色い玉子焼きが、うう、はみ出てきた。
おっと、左手で押し込む。
今度は紅いカニもどきが……
い、いかん、声を出すな!
なに?つっかえた?
あわてるな、おちつけ。
たかが、のり巻きの長いのではないか。
なに?いつもは輪切りにしてる巻きずししか食べたことがないから、1年に1度のこんな長いのは……。
ええい、声を出すな、と言うに。みぐるしいぞ。
ううっ、ぐ、ぐるじい~~。ドンドン
うろたえるな!こんなくいもんぐらいで、なんだ。日頃の精進、鍛錬がなってないぞ。
うう、おぶー、おじゃ……
ぐぐ……
うっ、あち”ヂヂ……
プハー
おい、バカッ、吐きだす奴があるか!
カアーット! おい、声出すなって言ったのに……。
ったく、これはサイレントムービーなんだぞ!
ひえ~~。 (吟)

