"Walk Life Balance" (三人道歩記)
たしか藤沢周平さんのエッセイ集だったかに、佐野洋さんの「歩け、歩け」という本の紹介があったと思うが、それには娘さんがいたずら心でお父さんの携帯電話に内緒である着メロを入れたらしい。
そして会社にいる父の携帯に電話した。
父は最初知らない着メロでわけが分からなくて戸惑ったようだ。
そこへ娘さんから電話がかかってきて「お父さん、あわてたの? 面白い」と。
それは父と娘、父と時空を結ぶ『歩くうた』のメロディーだった。
そんな親と子、世代間を想い出で繋ぐ“TOKYOウォーク2017”が昨日みなづき11 10日土曜日、芝公園から始まった。
3年後に東京オリンピックをひかえてのスポーツ熱をたかめるべく毎年恒例の市民健康ウォーキングでもあり、主催は東京都、日本ウォーキング協会などで年に5回すべて別の場所で催行され、5回完歩すれば金メダルも授与される。
2017第1回大会の昨日は梅雨入り宣言もどこへやらの好天、いやそれ以上に気温32度という暑さでしたが、幸いみなづき(6月)らしからぬ心地よい爽やかな風が時折り吹きぬけ、足取りをも軽く追い風参考ながら(?)快いトリオ・ウォークを堪能できました。
随行された男女おふたりと私の三人組でこの日はBコースを10時前に御成門スタート~一路北上し、内幸町を左折~虎の門~赤坂一丁目~飯倉~麻布十番~魚籃坂~泉岳寺~札の辻~芝浦~南浜橋~芝三丁目~芝公園~増上寺~御成門ゴールの13km シティウォーク。
スタートしてから歩道に満ち溢れんばかりの参加者の多さに私と随行されたお方は余りの渋滞に嘆息されたが、「なあに、はじめの内はこんなもんだがその内バラけてくるので今は辛抱」とか言っている内に内幸町に来ると「ほら人生と一緒で辛抱してれば道が開けてくるでしょう」と妙な歓びを共有したものです。
やがて虎はいなかったが虎の門を過ぎて、赤くもない赤坂一丁目も越えて、おや此処は一際モダンなビルの佇まいに感嘆。六本木ですか。アークヒルズ?あるくヒルズ? って、ビルが夜中に歩いたら出勤してくる人は探すのに一苦労だな……。などと思ったりして。
おやおやそうこうしているとどこからか美味しそうな匂いがしてくる。堪らず随行のお一人が朝食べていないことを洩らし、時間的にもお昼近くなっていたので食べログを繰って中食兵站予定地のハンガリー料理「パプリカ・ドットフ」はどこやらほいと、GPSスマホで探索すると魚籃坂にあることが判明。どうやらコースの1km先のようだ。が、分かりにくい。
眼を皿のようにしてそのハンガリーを探している内に、メンバーも段々ハングリーになってくる。それで留まればよいがどうかアングリーになりませんように……。
暑い、腹は減る。泣きそうになってくる……。
しかし吾らの願いが神に通じたのか、三人寄れば文殊の知恵というが協力し合って英知を出し合った結果、とうとうそのハングリー、じゃないハンガリーを見つけた時の三人の喜びようと言ったらもう堪りません。一人は目にうっすら涙を浮かべていたぐらいですから。
ん?目が、いや汗が目に入ったのか? いや、そんなこたあどっちでもいい。とにかくここでピットイン。
砂漠でオアシスを見つけたキャラバンや魚心あれば水心?いや水を得た魚のありがたい気持ちが痛いように分かってくるとはこの事か。
土曜日はランチをやっていないので多少割高なメニューだったが、わざわざハンガリーに行ってこれを食べることを考えれば、これはこれでリーズナブルと言えよう。懐かしのパプリカ料理は東欧チェコ料理以来の美味に舌鼓がポーン。
魚籃坂と書いて「ぎょらんざか」。魚籃とはビク(漁具)でこの辺は海に近いこともあってか釣り人がこの界隈で漁具を買い求めて魚釣りに行ったことが推察される。
現に魚籃坂に「つり具」と大きな看板も現存したが、どうやら魚籃観音の由来の方が歴史的価値がありそうだ。近くの三田山水月院魚籃寺のご本尊は魚籃観世音菩薩像で、大きな鯉の上に魚カゴを持って立ち功徳を施す乙女像は大漁や海の安全とか魚供養などで信仰も厚い。
横軸や縦軸の研究掘り起しにもなるウォーキングだな。
そうこうして燃料補給したあとは勇気凛々、元気百倍、残り半分の道行も早足健康法で一気に追い込み、まくりを駆ける。
シティウォークだから歩くのは簡単で道に迷うことも少ないが、何やらビルと道路と車のパターンが多くて藤沢周平文学のように抒情的な自然風景描写もままならない情景が若干物足りないのが難点だと謂われればそれもまた否定できない。
が、敢えて修飾するならば「風と空と健康と。」でもしとくか。
今大会のテーマが「これからの東京へ歩いていこう」となにやら地域空間と明日への育成健康ウォーキングの立体的意味にも窺える。
つまり、東京は公共交通機関が発達し、環境にやさしいまち、健康なひとを育てていこうという我々の子どもや未来のことを考えたベクトル方向性を示した国際水準に沿った施策とも。
おっと何やら水準ならぬ水面が見えてきました。
ここは芝浦、運河のある埋立地。綱で繋がれた小船が煌めくさざなみにのどかに揺られて心地よさそう。白河夜船ならぬ運河昼船か。
そうこう歩いている内に、もう将軍家菩提寺の増上寺。背景の東京タワーがお似合いの太刀持ちのようにも見える。もうゴールは目前。これだと14時前に完歩できそうだ。
あゝ楽しいな、こうしてコミュニケーションしながらのウォーキングって。あっという間だった気がする。
いや、残念。もうゴールインしてしまったじゃないか。GOALのスタンプ押されてしまったらまた戻って歩き直しもできない。
それにしても大会初参加のお二人さん、32℃のなか13kmの行程を早足で良くぞ歩ききりました。しかもグチ一つこぼさず楽しそうにシティウォークを堪能されたようで、これがいい思い出になるしいい自信にもなるでしょう。
それに何より早足健康法をご自身の躰で会得されたのではないでしょうか。健全な精神は健全な肉体に宿ると申します。私も美人と歩く楽しさ幸せも知りました。
完歩後もう歩くのはイヤだと言いながら駅まで軽い足取りで歩かれてましたね。
しばらくしたらまた歩きたくなるものです。それはカラダがうずくカラダ。
はぁい、カァ~ト! おつかれさまでしたぁ~。ふぅ~ (^▽^;) (^_^;)










