(智)
ピンポーン
って、え?こんな時間に、誰?
💙「はい」
💜「あ!智さん」
💙「お?潤か?どうした?」
💜「エントランスで。
課長、酔いつぶれちゃって」
💙「え!まじ?」
そりゃ大変だ。
あの後、飲みだったの?
サラリーマンはつらいね。
急ぎ一階へと駆け降りて
ふたりがかりで
課長を課長の部屋へと運んだ。
課長の奥さん、怒ってるし。
しっかりしてくれ。
💜「助かりました」
💙「先に帰っちゃって、ごめんね」
💜「いや、智さん。来客中なのに」
💙「気にすんな、おやすみ」
💜「おやすみなさい。あ、智さん」
💙「ん?なんだ?」
💜「メリークリスマス」
💙「ん。メリークリスマス」
キラリ✨と光る腕時計。
可愛いあの子の・・・んふっ。
甘い・・・
幸せな気持ちで部屋に戻った。
だけど・・・
あれ?
・・・和くんは?
狭いワンルーム・・・
可愛いあの子が、どこにも居ない。
風呂場にも・・・トイレにも・・・
靴は?
慌てて玄関に戻ると
靴もなくなっていた。
脱衣所の・・・棚に。
俺の送った腕時計が
ポツン、とあるだけで・・・
・・・俺。
振られたのかな・・・
・・・俺。
嫌われたのかな・・・
そのまま、その場で立ち尽くした。
(和)
俺・・・
なにをやっているんだろう。
喫茶さくらんぼ🍒の休みをもぎ取って
クリスマスイブに
横浜の家から
電車を乗り継いで山形まで
智さんを追いかけて
押しかけて
こんな時間・・・
雪の中をひとりポツポツ歩くなんて。
開いているお店は
もうコンビニくらいで
それも真夜中には閉まるみたいだった。
今、何時だろ。
時計・・・
あ、時計・・・
お揃いの、あの時計・・・
智さんからの、プレゼント🎁・・・
しまった。
置いてきちゃった・・・
もしも。
彼女さんがそれを見つけたら?
修羅場になるかもしれない?
・・・
・・・・・
修羅場に・・・なればいい。
いや。
待って・・・
一歩一歩
雪を踏み締めて
どこへ行くでもなく
あてのない
幹線道路沿いの道を
すっかり葉の落ちた街路樹に
雪が・・・積もっていく様を
ぼーっと見上げながら・・・
智さんに女がいたとして、さ。
それが、なに?
俺・・・好きだと言われた。
時計・・・もらったもん。
あれ・・・俺のだもん。
意を決して
雪道をUターンすれば
自分の足跡が残っていた。
それを一歩一歩・・・
ぎゅっ、ぎゅっと踏み締めながら
元の道を・・・帰っていく。
気が済んだ・・・訳じゃ、ない。
んだけど・・・
身を引くのは、俺じゃないのかも。
そう思って・・・
すっかり冷えたカラダを
さっき通りかかったコンビニで
あったかい珈琲缶ふたつ買って
それで暖をとりながら・・・
まだ消えない自分の足跡を
一歩ずつ辿っていた。
俺のとった行動が
智さんをひどく傷付けた、なんて
気付かないままに
夜中にひとり危ないことして
風呂上がりに
雪の中飛び出すようなことして
自分ばかり悲劇のヒロインぶって
つくづく、俺って・・・バカ。
大馬鹿野郎。

