(和)




警察から連絡をもらった両親は


事の重大さに気付いて悲鳴をあげた。


保護されている交番まで駆けつけて


助けてくれた人の連絡先を聞き


ぺこぺこふたり揃ってお礼を言い


ワンちゃんにまたね👋と手を振るや


パトカーに先導されて


下宿先へと荷物を取りに行った。





・・・荒らされていた。





お巡りさん「君が無事でよかった」


両親「・・・・・」




あれよあれよとパトカーが増えて


いろんなことを訊かれた。


下宿先は基本的に現状維持で


何も取り出せず


大学の課題は


実家のパソコンからやることになった。





和父「必要なものは


また揃えてやるから・・・」





ゲームと漫画と着替えくらいだけど


一応、自分の愛着のあるものだから


なんだかな・・・悲しかった。





両親は大学も変わってもいいと


言い出したけれど


受験勉強を頑張って折角入った学校だし


卒業単位をコツコツためていたから


正直他を受け直すなんて嫌だった。





大事にしたいもの


自分を大事にする為に諦めるもの


その大きな選択を迫られて・・・





軽い気持ちでバイトに応募した所為で


こんな目に遭ってしまった・・・


と心が曇る一方で





和母「あのワンちゃんと飼い主さんに


何かお礼をしないとね」





・・・あの人に・・・また会える・・・





なんだろう。


どん底に突き落とされたのに


このふわふわと浮きあがる感じ・・・


サイダーがしゅわしゅわする感じ・・・


ぽかぽか春みたいな・・・


・・・秋だけど🍂


なんだろう。


まるで・・・まるで・・・




和母「あら、頬が真っ赤よ?


今、りんご病が流行っているんですって」





それ、小学生の病気でしょ?


一緒にしないでよ。





説明がつかないけれど


あの人を思うと・・・


心の奥がきゅ・・・っとした。





*ララァさんのお写真です*





翌日。


会社を休んだ父さんと母さんと三人で


お巡りさんに言われた通り


大きな警察署に行った。





「ご実家の住所など分かるものを


残していませんでしたか?」





・・・どうだろう?





和父「今の家は社宅扱いで賃貸なんです。


この際だから、引越します」


和母「何よりこの子の無事が大切です」





横浜の大学近くの街には


防犯カメラが各電信柱にあって


あの東名高速道路沿いの道も


赤いジャングルジムの公園も


あの日の映像が綺麗に残っていた。





危機管理のスイッチが入り


防犯意識の高い町に感心した両親は


さらにこちらの警察で


重点的にパトロールしてくださる


と聞いて


これも何かのご縁だから、と


この大学の近くの街に実家ごと


引越してくることになった。


そして下宿先の荷物は警察で保管されて


もう一歩も近付くことなく


下宿先も解約されてしまった。






喪失感・・・半端ない。





それでも・・・なんだろう。


母さんと帰りにデパートに寄って


お礼の品物を選ぶ時


甘い甘いチョコレートみたいな


ふわふわのお菓子が溶けていくみたいな


そんなものが


この胸をいっぱいにした。





あの人にもう一度会える・・・





ってことが


こんなにも心ときめくなんて





酷い目に遭って悲しいはずなのに


俺・・・


おかしいのかな・・・