(和)


ピアノの周りには大勢の人が集まった。


僕はそーっと少年の横から滑り抜けて


演奏を見守ることにした。


うまくいかなかった指の動きは


スムーズにそして生き生きと


彼はピアノを踊るように叩き始めた。



 

 

 

その少年のショパンは

 

子犬のワルツからノクターンに

 

そして幻想即興曲へと発展していった。




(智)


すぐ近くのホテルで


すごい演奏があるぞと一報が入ったのは


俺の子どもの頃のピアノの先生からで


もしや・・・と思った。


きっと・・・と思った。


先生📱「年末で実家に帰って来ているだろうと思ったよ。すぐ近くだ。出て来いよ」


俺は宝ヶ池まで走った。


ロビーに溢れるピアノの音。


和の音じゃ、ない。


がっかりして去ろうとしたその時。


・・・信じられないものを見た。


・・・


・・・・・


そしてその音は俺の耳を劈いた・・・



(和)


男の子「お兄さんも弾いてよ」


声を掛けられた。


彼のお兄さんなのかな。


僕と同じくらいの年齢に見えた。


シューベルトの譜面を渡された。


・・・弾けなくは、ない。


・・・だけど・・・


・・・いや・・・

 


周りの人達に求められるままにピアノを


弾いた。


智との演奏よりも軽く・・・


ただ、ピアノを連弾した。


人々はとても喜んでくれた。



*ララァさんのお写真です*


 

智との演奏とはまるで違った。


ピアノは弾けたけれど


心の中の智と一緒に弾いたから


弾けたんだ。


まさか智が聴いていて


その心に深くナイフを刺しているなど


思ってもみなかった・・・