昨年9月に英国から始まった40周年記念の世界ツアーの大阪公演に行きました。感動の連続でした。正に「スペクタキュラー」の名にふさわしい豪壮な舞台で、チケット代2万円は節約中の私には大きな決断でしたが値段以上の価値があり見逃さなくて良かったです。
最近は「レミゼ」も「ミスサイゴン」も「サンセットブールバード」も作品規模の縮小化が進んでいるのでバブル期にミュージカルファンになった私には久々の大規模な舞台の登場が格別に嬉しかったです。
更に楽しかったのは演出で、これまでのコンサート版よりぐっと演劇寄りでした。ファンティーヌやエポニーヌは白い光に包まれて中央のゲートから去る事で命の全うを表現、整列していた学生達は一人ずつ凶弾に倒れ、最後にアンジョルラスが旅立ちました。
それにしても、と改めて感嘆したのはこの作品の音楽の力強さです。言葉の壁を超えて刺さる名曲の数々。生オケの本格的な演奏や出演者一人ひとりのエネルギッシュな歌に何度も号泣しました。この作品に関する過去の思い出も甦り、至福の時間を過ごせました。
この日の主な出演者は次の方々です。国際色豊かなキャスティングにこの作品の偉大さも再実感しました。サイン入りプログラムを持っている人がいて、これが「大阪公演から出待ち不可」の警告理由だと思いました。東京で騒ぎを起こした人、迷惑千万です。
ジャン・バルジャン(Gerónimo Rauchさん)
線が太く包容力のある容姿で、凄まじい声量と声域を誇る圧倒的な歌から繊細な囁きまでバルジャンの苦悩と慈愛を感じさせて圧巻でした。「オペラ座の怪人」の怪人役も演じておられて世界的な超一流の方を生で拝見できて大感謝です。
ジャベール(Jeremy Secombさん)
彼も「オペラ座の怪人」の怪人役を演じた経歴の持ち主で圧倒的な「Stars」には信念と孤独が深く滲み出て強く胸に迫りました。自殺場面は現れた瞬間から死人のようで、演技に共感性が高いので最後の選択が可哀想で仕方なかったです。
ファンティーヌ(Channah Hewittさん)
彼女は世界ツアーの英国初日キャストで、確かに「I Dreamed a Dream」が劇的で、幸せな日々を思う明るい声と悲痛的な声が一音一音に込められて緩急の激しさにハッとさせられました。強い存在感が物語全体に影を落として見事でした。
マリウス(Will Callanさん)
良家の学生らしい伸びやかな容姿と澄んだ歌声。恋に揺れる繊細な青年像と革命への情熱が感じられて、若々しいひたむきさが舞台に瑞々しい空気を運んでくれました。誰に対しても優しい好青年で、だからこそ「Empty Chair」が感動的でした。
コゼット(Lulu-Mae Pearsさん)
本格的なオペラ歌手で「オペラ座の怪人」のクリスティーヌも演じておられ、品があって上質なソプラノが聴き応えがありました。清楚な容姿で純真な愛を体現、希望や幸福感を感じさせてくれる存在として、十二分な美しさに見惚れてました。
エポニーヌ(Nathania Ongさん)
「On My Own」はppから始めず最初からffで歌い上げる解釈に驚き、後半は更に声量や激情が増して圧倒されました。バラードではなく腹の底から訴える激しい歌で劇的でした。貧しく必死で生きている様も演技とは思えないほどリアルで絶品でした。
テナルディ夫妻(ke KempnerさんとKatie Hallさん)
二人の軽妙な動きと毒気に笑わされつつ、テナルディはイケメンで、テナルディ夫人は本舞台屈指の強い喉の持ち主。手拍子を煽られましたが拍手を忘れるほど見惚れて聞き惚れた観客が多かったのではと思います。大合唱時の2人の立ち位置も楽しめました。
アンジョルラス(Joe Griffiths-Brownさん)
ウエストエンドの若手注目株で身体能力の高そうな体躯ながら体育会系というより文武両道に長けたIQの高そうなエリート学生という雰囲気で、革命の理想を情熱的に体現されていました。仲間を鼓舞する歌声は力強く、若さと正義の象徴として舞台を牽引しました。
アンサンブルの方々の緻密な演技と喉の強さにも圧倒されました。大人数の場面の迫力に何度も感動の涙が込み上げました。一人が複数の役を演じるというのも普段とは違っていて、アンジョルラス役者が結婚式の場面で給仕を演じる…のはなかったです。乾杯という歌詞のところは日本語で乾杯と歌っておられました笑。
東京公演の前半だけに出られたバルジャン(Killian Donnellyさん)、ジャベール(Bradley Jadenさん)、コゼット(Beatrice Penny-Touréさん)は9月8日から英国40周年限定公演に出演中。
こちらは映像化されると思うので別の方で観られてラッキーと思っていますが、ジャベールのブラッドリージェイデンさんの正気でない凄い歌の映像に度肝を抜かれました。URLを貼らせて頂きます。
壮大な舞台装置と生演奏の迫力にキャストの熱い歌声と芝居が見事に融合し観客を圧倒し続ける素晴らしい舞台でした。今も感動の余韻に浸っています。今回の公演に携われた全ての方々に感謝です。


