その頃Iが懇意にしていた

仕事関係の取引先の若い2代目社長から

当時流行だった自己啓発セミナーに

Iは誘われた。

 

 

その自己啓発セミナーは

1週間泊まり込みで参加するものだった。

費用もそれなりにかかった。

 

 

今思えば、

そのセミナーに参加するその日の朝まで

Iは全く普通だった。

 

子供たちを抱っこし、

「行ってくるわな」と言う優しい父親。

そして私にキスをして出かけた。

 

 

1週間後、

Iはとても啓発(ある種の洗脳のように)

されて帰ってきた。

帰って来るなり、

ものすごく為になったので、

私にも参加するように熱心に勧め始めた。

 

 

当時次男は生まれたばかり。

そんな時期にとても無理だと断ると、

「子供の面倒は全部オレがみるから、

お願いやから参加してほしい」と

頭まで下げる。

 

 

え?

私は戸惑ってしまった。

これまでのIなら、

私が一人でどこかに行き何かをしようと

すると、決まって「あかん」と束縛して

いたのではなかったのか。

私は少し複雑な気持ちになった。

 

 

そしてこれが最初に感じたIの異変である。

(その後Iが私を束縛することは 

 一切なかった)

 

 

 

何日か説得され続けた。

だが、どうしてもそんな気持ちに

なれなかった私は断った。

 

 

「わかった」と、

やっと言ってくれたと思ったら、

 

自分はもう一つ上のクラスに

もう一度参加すると言い出した。

 

 

「1週間もの間また仕事を休めるの?」

さすがにそう尋ねると、

「親父にはもう話して許可を取った、

 費用も出してもらえる」

と言ったので、私はもう黙るしかなかった。

 

 

 

その2度目の啓発セミナーで

Iは一人の女性に出会い、

大恋愛に落ちたのだ。

 

(後になって

 写真を見たことがあったが、

 モデルのようにスレンダーな

 美人だった)

 

 

とにかくそれが、

そのセミナーがきっかけで、

結婚生活は破綻に向かった。

 

 

 

後の人生で私は何度も思ったものだ。

あの時Iが勧めるままに乳飲み子である次男を

置いて私があのセミナーに参加していたら、

Iとあの女性は出会うことはなく、

私たち家族の幸せは続いていたのだろうかと。

 

だが、

本当にあのセミナーに参加すべきだったの

だろうか?という問いには、

何度自問しても答えはノーしか出なかった。

私は何があってもそのセミナーに参加しなくて

よかったと思った。

 

 

・・・・・・・