言いたくなかったが、
言うべきだと思い、
「付き合ってる人います」と言うと、
案の定Iはすぐに聞き返した。
「そいつどこの大学行ってんの?」
もし阪大生だとか神大生だと言えば、
すぐさま、
「あ~、オレも軽く受かってた
とこや」とIは言ったであろうし、
関西の有名私立大の名前を出していたら、
「寝取っても受かった」と言うだろう。
それならそう言わせてあげたいと
私は思った。
「・・・東大」と私が言うと、
Iはギョッとした顔をして
一瞬黙り込んでしまった。
それが見ていてとても気の毒だった。
できるならこの人にずっと大口叩いて
いてほしい。
私はそんな気持ちになった。
「へ~」
何とか取り繕ったIは、
今度は鼻でヘラヘラ笑いながら
こう言った。
「で?
もうやったん?」
え?
私が答えに困っていると、
「いやいや冗談冗談」と言って
またヘラヘラ笑った。
とは言え、
私はこんなIのことを嫌いだとは
思えなかった。
むしろもっとIのことを知りたいと
好奇心が膨らんだ。
「東大かぁ」
「東大生かぁ」
それからのIはずっと一人でそう呟いて
いた。
それから多分1週間後ぐらいに
郵便が届いた。
差出人はIだった。
中には「三四郎」の本と、
手紙が入っていた。
手紙には本の感想文が書かれていた。
ボクはこんなふうに思いました。
ボクならこうしたと思います。
などと、
小学生が書くような読書感想文。
そして
もう一枚の便せんは私へのラブレターだった。
手紙を読んですぐ、
私はIに電話をかけた。
もうIと付き合うことを決めていた
のだ。
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