昨日の夕方のことだ。
クマオが車にはねられた。
大事には至らなかったのだが、
自転車のクマオに正面から
車が突っ込んできたと言う。
「りこちゃん、大丈夫やで。
頭は打ってない。
ただ右半身が重くてダルいのと、
かすり傷ぐらいで済んだ」
救急車で担ぎ込まれるほどでは
ないので、病院は翌日に行く
ことになったらしい。
「大丈夫やから
心配しなくていい」
「うん」
クマオが無事でよかった。
すっかり安心していた。
ところがクマオが言う。
「りこちゃん、実は、これから
急に仕事の食事会になって」
「え?そなの?」
「うん。
どうしても来てくれと今連絡
あった」
「行けるの?」
「行ける。行ってくる」
事故。
急な食事会。
突発的な事だらけやん。
こんな時、狭量な私は戸惑うばかりだ。
にしても、
そんな事故った身体で本当に
食事会など行けるのか。
気になった私は、
自宅から1キロちょいほどの
現場まで向かった。
途中、救急車とすれ違う。
まさか?
え?
心臓がぶっ壊れそうなほどの
勢いで、自転車を走らせた。
現場にはパトカーが数台。
事故処理はすでに終わって
いたようだが、クマオの姿も
クマオのあのペパーミントの
ビアンキも見当たらない。
そのままクマオの家まで行く。
が、家にもクマオの自転車はない。
もしかして、やっぱり容態が急変して
病院に搬送されたのか。
そういう話を訊いたことがある。
不安マックスで、もう一度現場に
戻った。
やはりクマオはいない。
時刻は8時前になっていた。
電話をかけるも応答なし。
諦めてよろよろと帰りだすと、
スマホが鳴った。
「クマオさん!
どこ?病院?」
切羽詰まった私の声に、
え?と戸惑った様子のクマオは
若干言いにくそうに言った。
「いや、今、タクシー。
これから行ってきます」
は?
タ、タクシー?
たった今までの心配から
急遽一転して怒りが込み上げた。
「私、心配で今現場まで来た」
「あ~、りこちゃん、ごめんな。
大丈夫って言うたやろ」
そのクマオの返答に、
ついに爆発してしまった。
「心配なもんは心配なん。
クマオさんさぁ、
そこまでして食事会
行きたいの?
それって合コン?
あのチャラい○○さんが
セッティングしたんでしょ?
そんなの合コンに決まってる。
アホ!
しかもコロナヤバいのに。
ドアホか、お前は!」
激しい怒りは収まりもしない。
クマオは悲鳴を上げるように
言う。
「りこちゃ~ん、
そんなこと言わんとって。
心配かけてごめんな。
早く帰るし、合コンなわけないし。
な、りこちゃんとこに帰るから、
な、待っててな」
知るか!
私は無言で電話を切ってやった。
その後、10時半過ぎになって
クマオは帰ってきたのだった。
昨夜、食べなかった食材を
お弁当に。
クマオの大好物のそぼろごはん。
三つ葉の軸で、ほうれい線を。
「凹むほど似てるわ」とクマオから
ライン。
