「クマオさん、キワウしないでね」
「キワウ?
何それ?」
「キワウ。反対から言ってみて」
「ウ・ワ・キ・・・・・何でやねん」
ずっとずっと以前、まだクマオが
本当に「キワウ」する前のやり取りだ。
もともと「浮気」と直接言うのは
何となく気が引けていた。
「キワウ」ということで、
茶目っ気が入り、言いやすくなる。
「まさかキワウ?」
「キワウ?してないわ!」
当時はこんな風にしょっちゅう
使っていたクマオと私の隠語。
が、本当にその気配を感じた時には、
とても言えなかった。
その時は、それがただの「キワウ」でも
「浮気」でもないような気がしたからだ。
それきり、「キワウ」という言葉を
使うことはなかった。
もうそんな言葉忘れていた。
つい先日クマオが言った。
「オレらって、ほんまに仲ええよな」
「うん」
クマオの方からこんなふうな
話をしてきてくれるのは
やはり嬉しい。
「オレが、ちょっと粗相してしまった
けどな」
「粗相?
あ、お漏らししたっけな」
「何でやねん」
私の人生一悲しかった出来事も
こんなふうに笑い話へと風化して
いきつつあると、初めて感じた瞬間
だった。
その時、
おもむろにクマオが言った。
「キワウ」
「キワウ!」
思わず反復してしまった。
懐かしい響きに、思わず笑ってしまう。
「クマオさんキワウしたらあかんって
りこ、よく言ってたな」
「へへ・・・」
何だか、恥ずかしいような
照れくさいような変なきもちに
なった。
また、クマオに言ってもいいのだろうか。
「キワウしちゃやだ」と。
そんな彼女チックな発言が、
今の私に許されるのか。
ってか、
今の私って、クマオの何なのだろう。
どうでもいいことだけど、
ふと気になった。
いぷりがっこのクリームチーズはさみ。
フーチャンプル。
沖縄展で購入したお麩で。


