昨夜、Tシャツと半パンに着替えて
クマオはやって来た。
「お疲れさま~」
そう言って出迎える。
その瞬間、目に飛び込んできた
クマオのTシャツ。
ミッキーマウスの絵柄だ。
「うわっ、ミッキー・・・」
そう言いかけたが、ふっと口を閉ざして
しまった私。
これまでもクマオがミッキーマウスの
Tシャツを着ることはあった。
それでもセレクトショップで買っていた
これまでのTシャツと比べるとやはり、
サイズ感がよくない。
同じミッキーの絵柄でもどこか子供っぽい。
私の脳裏に瞬時にクマオと女の
やり取りが蘇る。
「くぅ~、ディズニーシーで着る
おソロのミッキーのTシャツ買おうよ~」
「そだね」
「ね~、くぅ、サイズは?
M?L?」
「どっちかな~」
きっとこの時に買ったヤツだ。
私の顔色が半端なく変わり、
何かを感じ取ったのを察知したクマオ。
「何?どうしたん?」
焦りながら、洗面所に行く。
「ううん」
私は何も気づかないフリをして、
キッチンに立つ。
洗面所から戻ると、
クマオは取って付けたように
言った。
「何年か前に、サマソニに着て
いったTシャツ」。
でしょうね。
2018年の5月にそれを着て、
女とディズニーシーに行き、
8月にまたそれを着てサマソニ。
こういうことでしょ。
私は何も答えず、話題を変えた。
「お腹空いた。早く食べよう」
「うん」
グラスを合わせる。
が、おさまらない感情。
心の中に毒が溢れる。
何で今これ着てくるかな。
そんなもん捨てろや。
私が知らないとでも思ってる?
バカにするな。
だが、ふと思い出した。
長男のことだ。
結婚が決まり、初めて相手方のご両親に
ご挨拶という日。
長男はここぞという時には必ず締める
ネクタイをしていた。
「やっぱりそのネクタイいいね」
私がそう言うと、
「あっ!ヤバいわ。
これ、元カノのプレゼントや。
いくら何でも、今日のこの日にこれは
あかんやろ」
そう言って、慌ててネクタイを変えていた。
え?それ元カノのプレゼントやったん!
ずっとしてたやん!
男にとって、思い出の品は、
ただのモノでしかすぎないのだろうか。
そんなふうに思っても、
私はただただ嫌悪感を覚えた。
頭の中で、何度もそのTシャツを
引き裂いた。
コブサラダ。
レンコンとツナのカレーハニー味。
スーパーで割引シールが貼られていた
ステーキ肉。
ほんとはもっとレアがいいが、
昨日は若干火が入りすぎた。


