2階の部屋の掃除機掛けを終えて、階下にもどると、
クマオがリビングにいる。
「ヒャ~!」
私はびっくりして悲鳴が出る。
そんな私を笑いながら見ているクマオ。
「電話したけど出なかったから、来た。
今日はりこちゃんちで勉強する」。
日曜日のことだ。
そう言えば、以前もこうだったな。
クマオが資格試験の勉強を始めると、
休みの日は私のうちで勉強するのが定番だった。
2年ぶりのことだ。
クマオはほぼ毎年何かしらの資格試験を受けている。
去年もその前も、その時はきっと女の家に籠って勉強して
いたんだろう。
そう言えば、テキストがバスタオル類といっしょに
車の後部座席に置いてあったことを覚えている。
いろいろなことが、元の位置に戻ってきているのを
改めて感じる。
それでも今の私はやっぱりクマオの「彼女」ではない。
私が戻ったのは、クマオと女が出会う前の場所であり、
もともと「彼女不在」という認識でいた(あるいはそう後付けした)
クマオのもとに、女が入り込んだ。
クマオは女に言ったはずだ。
「友達ならいるけど、彼女はいない」と。
そう言って、二人の交際をスタートさせたのだ。
クマオにとっては、セックスありきが「彼女」であり、
セックスが介入されない関係はやはり「友達」でしかないのだ。
クマオが、律儀にもそんなふうに、きちんと区別していることを
後に私は女の存在で知ることになったのだ。
「今の私は、クマオさんにとって一体何?」
そう尋ねた時、クマオは困った顔をした。
「りこ、そんなこと知りたいのか?
りこはオレにとって特別な存在や」。
わかっている。
そんなこと。
でも、弱い私はすぐに確信が欲しくなってしまうのだ。
「オレ、あの人(サロンの女)とは、限界を感じた。
でも、りことはずっといっしょにいたいと思う。
りこがいなかったら、生きていかれへん」。
クマオは真っすぐ私を見てそう言った。