1年前の今頃、クマオはまだまだ女とお花畑にいた。
クマオと離れ切ることができなかった私は、会えばクマオに不満をぶつけていた。
クマオとて、私のことを捨てきることができないまでも、やはり女至上主義に走り、
私に対して、今ほどの思いやりを示してくれることはなかった。
私のどこが悪かったのかとしつこく問い詰める私に、クマオは言った。
「どこも悪くない。
ただ長年連れ添った熟年夫婦みたいになってしまったと思ってる」。
新しい女との新鮮な関係。 クマオにとってこれほど刺激的なものはなかったのだろう。
この新しい女との関係に、完全に悩殺されていたクマオ。
その頃の私の願いは、ただ一つ。
「何も恋人に戻ってとは言ってない。
以前と同じように私と付き合ってほしいだけ」。
「以前と同じようにとは?」
「以前と同じように、いっしょにどこかに行きたい」。
クマオは、またかと言うような顔をしては、まっすぐ私の目を見てこう言うのだった。
「以前と同じようにはできないよ、りこ。
オレは彼女と付き合ってるから」。
その言葉に、私は発狂しそうな勢いで、何度もぶちまけたり、懇願したりもしたが、
クマオの答えがブレることはなかった。
「じゃあ、何で?もう私のことは放っておいてほしい。
彼女のことが大好きなら彼女のことだけを考えてあげて」。
何度も何度もこの結論に行きついては、また戻り、繋がっては、また切れかける。
これを繰り返してここまで来た。
土曜の深夜、クマオからライン。
「りこちゃん、北海道、2泊3日ではやっぱりタイトやねん。
11日から行けるなら3泊4日に変更したいけど、
りこちゃん、行ける?」。
もちろん行ける。
あの時、ぶちまけたり懇願したりした私の願いは、すっかり叶っている。
いや、すっかり叶っている以上かもしれない。
それなのに、なぜかせつない思いがある。
ここがクマオと私の最終到達点。
これ以上にはならないことがわかるからなのか。
自分でもわからない。