6月5日水曜日。クマオの手術の日。
クマオは朝から電話をかけてくる。
「いよいよやね。クマオさん、心配」
「大丈夫。終わったら連絡するよ」。
そんなやりとりばかりを数十分する。
手術が始まる少し前になると、クマオも緊張しているのか、クマオからのラインが増える。
簡単なポリープ摘出手術とは言え、やはり全身麻酔。不安に思い出すとキリがないのは
クマオも同じだったのかもしれない。
「オレが、ずっと見守り続けていたい人」
「それが、りこ」。
「クマオさん、ずっと見守ってね」
「おぉ!」。
こんなやりとりをする。
傍にいたい。心の底からそう思うが、ただただラインの返信をする。
手術の日が決まってから、時間があると鶴を折っていた私。
その折り鶴の写真をクマオに送信する。こんなことしかできないのだ。
「鶴や!りこちゃん、折ってくれてたん!ありがとう!
それじゃあ行って来るね!」。
私はドキドキしながら、忙しく仕事をしながら時間が過ぎるのを待った。
3時半すぎ、「終わったよ」 「ちょっと痛い。寝るわ」 とクマオからのライン。
よかった。私はホっとして、仕事中なのにちょっと涙が出た。
夕方、前日と同じぐらいの時間に土手まで自転車を走らす。
土手に着き、クマオの病室を見上げる。カーテンが引かれ、中には電気がついている。
「クマオさーん」
「土手見てくださーい」。
私はそうラインした。
しかし、そのラインは既読にならず、当然返信もない。電話もかからない。
女だ。女がいるのだ。そして、女の姿が見えないようにカーテンを閉めているのだ。
私は悲しくなった。また、私の一人相撲だ。
どよんとした虚しい気持ちで私は帰路に着く。
家に着くころ、クマオからライン。
「りこちゃん、ごめん。オレ、歩行練習とか・・・・・」と言い訳のラインに続いて、
「あとで電話する」。
やっぱりね。女が来てる。クマオさんが、術後一番に会いたかったのは女なんだね。