その日のセールの買い物は本当に楽しかった。
クマオも私も予約しておいた洋服を何点か試着する。
同じ試着室を、交代で使うクマオと私。
お店の人が言う。
「お二人とも洋服好きでいいですね。好きなものが同じって結構大きいことですよ」。
そうだ。そうかもしれない。
そして、本当にもしそうなら、価値観の大きく違うクマオと女の蜜月は、残念ながら
そう長くは続かないはずだ。
クマオが女と付き合い始めた最初のころ、クマオは女の事を、
「趣味も何もかも合わないんだけどね、(でも好きなんだ)」 と言っていた。
クマオのよその女に恋するその表情を目の当たりにして、私は胸が押しつぶされそうに
なった。それでも心の中で、「そんなの絶対長続きしない!」と、思ったことも、
ついでによみがえる。
そして、今、私は心の中でクマオに問いかける。
「クマオさん、今、めっちゃ楽しいでしょ」。
結局、迷った末、私はあるブランドのスカートとパンツに決めた。
私の買い物のお会計はすべてクマオのポイントで払う。
「クマオさん、ほんとうにありがとう」
「りこに似合ってたよ。またオシャレしておいしいもの食べに行こう」。
「うん」。
辛い記憶は事ある度によみがえるが、それは今の幸せをより際立たせるためなのだ。