3月。クマオの心は戻ってきている。この頃になるといよいよそう実感できるようになる。
2月の最終週のある夜、クマオは言う。
「りこちゃん、3月は土日ほぼ仕事になりそうだよ」
「そうなんだ」。
私は少しがっかりするが、土日共に仕事なら、クマオが女と会う頻度も減るはず。
そう思うと、それはそれでいいと思える。
「代わりに平日休み取るよ」。
クマオはさらっと言う。
「平日にお休み取るの?」
「うん」
「いつ?」
「まだわからないけど、○○(クマオが洋服を買う店)のダブルポイントがあるから、
そのあたりかな」。
「ふーん」。
イレギュラーな日常に何故かわからないが言いようのない不安を覚える。
私は、嫌味にならないようにも、攻めているようにも聞こえないように、注意深く言う。
「彼女の休みに合わせるの?」
クマオは辛そうな表情になった。肯定しなかったが、否定もしない。
「・・・わからない」。
わからないということは、そうするということだ。
「そっか。いいよ。無理しないで」。
私は笑顔でそう言う。
結局、クマオの優先順位は変わらない。女が一番、残りが私。
心も身体も私の手に届きそうな所に戻ってきていそうなクマオ。しかし、いざ手を伸ばすと
結局届かない。それが今のクマオ。
「関係ないよ。りこ優先だよ」。その言葉はやはりもう一生聞けないのかもしれない。