クマオの何気ない一言にこれほど反応してしまう自分。

 

もう私は壊れてしまった。いい年をしてあまりにもお粗末な仕上がりの自分。

 

もう嫌だ。クマオと会うからこんなふうになってしまうのだ。

 

会わなければ辛いけれど、これ以上傷が深くなることはない。むしろ時間はかかっても

 

少しずつでも忘れていけるはずだ。過去の恋みたいに。

 

私は早朝、湯ぶねに浸かりながらひたすらもうクマオに会わないでいる方法を考えた。

 

別の男性と新しい恋をするのはどうか。出会いがないわけでもなかったし、食事に誘われる

 

こともあった。たとえそれが不倫の恋であってもこの苦しみから逃れられるのならそれも

 

いいのではないか。そう思い、アクションを起こし始めたこともあった。

 

しかし、誰といっしょにいても私はクマオのことが頭から離れなかった。

 

目の前の男性はそれなりに素敵なところもあった。そんな男性たちと本気の恋に落ちたら

 

どんなに楽だろう。本気でそう思っているのに、クマオと比べてしまい、どうしても一歩踏み出

 

すことができずにいつまでも同じ場所に立ち止まったままの私。

 

一方のクマオは、いとも簡単に私を捨てて新しい女と恋に落ち、軽い足取りで一歩も

 

二歩も進んでいるのだ。どうしてそんなことができたのか。これほどの不条理があっていい

 

のか。私は狂った尺度で、今更ながら、クマオを問いただしたくなるのを抑える。

 

そんなことぼんやり考えているとあっという間に時間が過ぎる。その頃の私は、クマオと

 

決別して一人になると、とにかく何も手につかなくなった。開けても暮れてもクマオのこと

 

だけがぐるぐる回るのだった。楽しかったドライブデートも買ってもらったリュックのことも

 

そんな時には何の励ましにもなってはくれなかった。