「りこちゃん、今おうちにいる?」
「うん、いるよ」
「じゃあ、あと一時間ぐらいで行くよ。ちょっと持って行くものがあるから」。
何だろう。この間の返信の件とは関係なさそうだ。
一時間後、クマオは大きなクーラーボックスを持ってやって来た。
土曜日なのに仕事用の車で仕事着を着ている。
「あれ?今日お仕事だったの?」
「うん。○○市に行ってた」。クマオはそう言いながら、クーラーボックスを開けると、
大きなケーキの箱が入っている。中にはケーキではなく、サクサクのパイの中にクリームが
詰まっているアンジェラというお菓子だった。それも一つや二つではない。
私はいきなりテンションが上がった。サプライズだ。
「りこちゃん、これ、○○市で有名なあのレストランがやってるお店のやつ。
冷凍できるから、ゆっくり食べてね。あと、これは生菓子。今日食べて。」
クマオは説明しながら、どんどんお菓子を出していく。
「うわぁ!おいしそうだなぁ。これ、ウィスキーに合いそうだなぁ」。
「そうそう。解凍してからオーブントースターでカリッとさせて食べてね」。
「クマオさん、いっしょに食べようよ」。
「今はいいよ。また今度ね」。
「どうして買ってきてくれたの?」。
「あんな田舎町なのに有名みたいで行列ができてるねん。りこに食べてほしいなと思って
今日はわざわざクーラーボックス持って行ったんだ」。
私に食べてほしい。クマオはいつもそういう言葉を添える。
「ありがとう。めっちゃ嬉しい」。
私も素直な気持ちで喜んだ。本当に嬉しかった。
その夜、一人でウィスキーを飲みながらそれを食べてみた。想像以上に美味しい。
クマオが今、女といっしょに時を過ごし、女にもこれを買っていたとしても、そしてこの前の
旅行の件さえも、そんなことはどうでもよくなっていく。
クマオの誠意を素直に受け取ろう。そう思えた。
そして私の気持ちよ、ずっとこうでありますように。