クマオは帰りの車の中でも私の手を離さなかった。

 

別れ際、クマオは私を抱きしめてこう言った。

「ずっと好きやった」。

 

は?

 

私は、笑って 「クマちゃん、あんたバカか?」。

本当にそう思った。こんな簡単な嘘くさい口説き文句をよくまあ言えること!

 

半ばびっくりして呆れてもう笑いが出た。

 

クマオは笑わなかった。

 

「彼女何人いるの?一人や二人ではなさそうに思えるよ。」

「女友達はいるけど彼女と言える人はいない」。

 

私はこの時のこのクマオの言葉を今よく思い出す。きっとクマオは今の女を口説く時も

 

「女友達はいるけど彼女はいない」とそう言ったに違いない。

 

すでにもう何年もセックスレスで男女の関係ではなかった私たち。

 

目の前の女にありつくために、「りこ=女友達」と、クマオが頭の中で変換するのに

 

ためらいを感じる必要はなかったのだ。実際クマオにこのことを確認したことがある。

 

クマオは否定せず、申し訳なさそうに目をそらした。

 

女を口説くクマオの様子がこのシーンと重なり、正直これを書いている今もまだ心が

 

うずく。

 

そしてその時のクマオの彼女はやはり今の私のように傷ついたのだろうか。