考えてみればその日の私はイレギュラーな行動を取った。

 

いつもは家にいる時間帯に、いつもとは反対方向にあるコンビニへ出かけた。

 

その日は夕方バタバタしており、犬の散歩ができていなかった。

 

いつもと反対方向のコンビニへ行くことによって犬の散歩の距離もそれなりにまかなえる。

 

まだまだ寒い夜だったが、私はコートにブーツを履いて出かけた。

 

コンビニで支払いを済ませ、まっすぐ自宅の方へ歩き始めたが、ふと反対側の歩道へ

 

渡った。その時、ちらっと長身の男性がさっきまで私がいた歩道を歩いていることに

 

気が付いてはいた。その辺りは駅から少し距離があり、住宅街だということもあり、

 

歩いている人は少ない。数十メートル進み、次の信号で私は自宅の方へ戻るために

 

また横断歩道を渡り、もとの歩道へ戻った。その戻った先にさっきの男性が立っている。

 

何故かわからないが、その時その男性の方を振り返った私。

 

その瞬間「クマちゃん!」。

「うわぁー!」とクマオ。クマオは耳からイヤホンを外しながらかなり大きな声を出した。

 

もしあのまま歩道を渡らずにまっすぐ進んでいたら、間違いなく私とクマオが顔を

 

合わせるタイミングはなかった。

 

「え~!」「え~!」お互いびっくりしてそう言い合う。

「久しぶり~」「ほんとに」

 

テンション高く私たちは再会を驚き、喜び、話し始めた。自宅までもう数分の距離。

 

何から話していいのかわからない。10年のブランクだ。

クマオの母親ともその頃はほとんど会ってはいなかった。

 

「クマちゃん、結婚してるの?」。私はとりあえず質問してみる。

「してないよ~」

「え?まだ結婚してなかったん。よかった~」。

何故かそんな言葉が出た。

「オレみたいなアホなやつが結婚してたらやばいって思った?」

「違うよ。独身って素敵なことやんって思って。」

私は続ける。

「え?いくつになったの?」

「今年34歳になる」。

 

その辺りでもう私の家の前。「クマちゃんちまで送っていくよ」。私はそう言って、引き続き

 

犬の散歩を続ける。クマオとの再会をもう少し楽しみたい。クマオもそんな様子だった。

 

数分でクマオの家にも着いてしまう。今度はクマオが「送っていくよ」。

 

結局1時間半近く私たちはお互いの近所をぐるぐる歩き廻ったのだった。