「最後のデート」のその夜、クマオが予約してくれたお店に行く。

 

いつものお店の人に接客され、いつものカウンターに座り、いつものようにハイボールで

 

乾杯。「こうしてると何も変わってないような気がしてくる」、私は思わずそう言った。

 

「何も変わってないよ。最後じゃないし」。

「え?」と聞きなおすと、クマオは目をそらす。

 

その日、クマオはいつものお店でパンツを購入していた。その裾直しが来週仕上がる。

 

「来週、パンツ取りに行くよ」。つまりはまたいっしょに行こうと言ってくれているのだ。

 

「彼女とは行かないの?」私は恐る恐る尋ねた。

 

「行かない。彼女は洋服に興味がないからね。どうでもいいような服着てるよ」。

 

そう言いながらもクマオは彼女が可愛くて仕方ないといった風だった。

 

オシャレなクマオが洋服に関心のない女に恋をしている。

 

いったいどういうことなんだろう。どんな女なんだろう。私は訳が分からず混乱する。

 

どうしてそんな女?そんな女でいいの?次から次へと質問したいことが沸き上がるが

 

とりあえず一番言いたいこと、聞きたいことは封印しなければならなかった。

 

結局「最後のデート」は最後にならなくなったようだ。

 

クマオのことがまだまだ好きな私は、この後、激しい憎しみをかかえながらも、クマオと

 

友達同士のように続けていくことになった。

 

きっぱりと会うのをやめなかったその甘さゆえに、この後、地獄の苦しみを経験することに

 

なる。