「りこにはずっと元気で笑っていてほしい」。クマオは常々そう言っていた。
何度も何度もクマオのその言葉を私は聞いた。
ある年の7月、旅先で降りた駅に七夕の笹飾りがあった。クマオがその短冊にも
「りこがいつまでも元気で笑っていられますように」と書いて吊るしていたのを覚えている。
もしそれが本当に真実だったのなら、そして本当にずっとそう思っていてくれてたとしたら、
クマオ自身が私の笑顔を奪う張本人になったこの時のこの状況は、クマオにとっても
不本意極まりない状況だ。どうしてこんなことになってしまったのか、クマオ自身が
この矛盾に混乱し、そのことが耐え切れなくて、私のことを無意識に攻撃していたのかも
しれない。私に対して酷い態度を取り、自分を正当化するべく逆切れしたような言動。
それは自分の犯した罪に参ってしまわないための最大の防御だったのか。
今はほんの少しだけそう思える。ただその頃の私は、完全な被害者意識ですべてを認識する
ようになっていた。傷はどんどん大きくなっていく。