「荒木貞夫風雲三十年」という本があります。荒木貞夫は元陸軍大将です。

同著によれば、昭和五年に「日本をスパイする」という翻訳本が出版されたそうです。「日本をスパイする」を書いたのは、駐日ソ連代理大使を勤めたベセドフスキーという人物で、フランスに亡命した後に書いた暴露本です。ソ連政府が日本国内でどんなスパイ活動をしていたのかが書かれています。

敗戦後、荒木貞夫元大将はA項戦犯として収監されました。荒木元大将は、翻訳本「日本をスパイする」を証拠として裁判所に提出し、日本の対支政策の正当性を証明しようとしました。荒木元大将は自宅にこの本を二冊持っていました。一冊を取り寄せたところ弁護士だまりの部屋でなくなってしまいました。しかたがないから残りの一冊をとりよせましたが、これも紛失しました。どうしようもないので弁護人などに依頼して図書館や古本屋を探し回らせたそうですが、一冊も見つけられませんでした。上野の図書館の館員は「ソ連の人が来て持っていった」と証言したそうです。

ソ連による焚書の一幕が書かれていて興味深いものです。焚書したのはアメリカだけではなかった。当然と言えば当然ですが。