沖縄の代表的な詩人
山之口貘(やまのぐち・ばく)


バクさん、と
親しみを込め、呼ばれています

(『アルバム・山之口貘』中扉より、2003年刊)


彼の「会話」という詩
*読みやすいように、一部改行し、振り仮名を付しました。
下記に、印刷面を添付。



お国は? と女が言った
さて 僕の国はどこなんだか
とにかく僕は煙草に火をつけるんだが
刺青と蛇皮線などの連想を染めて
図案のような風俗をしているあの僕の国か!
ずっとむこう


ずっとむこうとは? と女が言った
それはずっとむこう
日本列島の南端の一寸手前なんだが
頭上に豚をのせる女がいるとか
素足で歩くとかいうような
憂鬱な方角を習慣している
あの僕の国か!
南方


南方とは? と女が言った
南方は南方 濃藍の海に住んでいるあの常夏の地帯
龍舌蘭と梯梧(デイゴ)と阿旦(アダン)とパパイヤなどの植物達が
白い季節を被って寄り添うているんだが
あれは日本人ではないとか 日本語は通じるかなどと話し合いながら 
世間の既成概念達が寄留するあの僕の国か!
亜熱帯


アネッタイ! と女は言った
亜熱帯なんだが 僕の女よ
眼の前に見える
亜熱帯が見えないのか! 
この僕のように
日本語の通じる日本人が
即ち亜熱帯に生れた僕らなんだと僕はおもうんだが
酋長だの土人だの唐手だの泡盛だのの同義語でも眺めるかのように
世間の偏見達が眺める
あの僕の国か!
赤道直下のあの近所

(『山之口貘 詩と語り』2013年 琉球文化研究所編 以下、詩の複写は同じ)

この作品は、1935(昭和10)年の
『文芸』に発表されました


お国は? と出自を
問われれば


ためらうことなく
答える時代に
なったようにも見えますが

現在でも
口ごもってしまう方々が
いらっしゃることでしょう


切なくも毅然と
"世間の偏見"・差別と対峙する
ように感じられる詩


山之口貘のこの詩が、ふと
浮かんだのは


五輪開会式を担当し辞任した人の
過去のあからさまな差別意識や
侮蔑の態度に
接したときでした


差別する対象は
違えども

その心根に巣食うものは
似ているように思います


差別・偏見は
外に、内に、淀(よど)み


ちょっとやそっとでは
越えることができかねるように
感じます


この詩の
会話と会話のあいだの
饒舌(じょうぜつ)なモノローグに
描かれる故郷の姿、愛情


在沖40年を越えた私は
この風物の名称を
見るだけで潤んでいくのです


「憂鬱な方角を習慣している」とか
「白い季節を被って寄り添うている」などに
深い意味と情緒を感じます


山之口貘は
本名・山口重三郎

1903(明治36)年に生まれ
1963(昭和38)年死去
享年59歳でした

祖先は鹿児島・口之島とも
言われています

1922(大正11)年に上京し
美術学校に入学するも
1カ月で中退


働いてはいるものの
その暮らしは貧しいもの
でした


1923(大正12)年
関東大震災で罹災
罹災者恩典で帰郷


1925(大正14)年
詩の原稿を携え再度上京


1932(昭和7)年
詩人・金子光晴氏と出会い


生涯を通じての
大切なご縁となりました


(前述本より)


1938(昭和13)年
処女詩集『思弁の苑』出版


1958(昭和33)年
『定本 山之口貘詩集』出版


同年、34年ぶりに帰郷


このとき
島のことばで挨拶したバクさんに
日本語での返事が返ってきて


「沖縄は、島のことばまでも
戦(いくさ)でやられてしまったのか」と嘆いた詩があります。
(弾を浴びた島」)





「座布団」という



バクさんの詩のことば、は

柔らかく、現象に膨らみを添え、
それでいて、何と鋭いことか


人間たる自身を含め
社会全体を見据え

気高く、時にひねて

貧しさのなかで
生まれた詩には

おかしみや哀感が感じられます


文学の先輩・仲間に
恵まれた人生


公園や友人の下宿先などに
寝泊まりし
住所不定の時期があったとき


作家の佐藤春夫氏は
それを見かね


バクさんが警官に尋問を受けても
困らぬようにと

自身の名刺の裏に


山之口君ハ性温良。
目下窮乏ナルモ善良ナル市民也

と書いて身元を保証してくれたと
いいます
(前述本より、執筆・後田多敦氏より参照)



最後に、「博学と無学」という詩

あれを読んだか
これを読んだかと
さんざん無学にされてしまった揚句
ぼくはその人にいった
しかしヴァレリーさんでも
ぼくのなんぞ
読んでいない筈だ

この自負を支える素晴らしき
ユーモア!(皮肉か?)


故郷は
自分の宇宙のなかに
抱きしめてあるもの


沖縄の詩人・船越義彰氏は
バクさんの望郷について

「掌のなかに故郷を包みこんでいつくしむ」ようなものでなかったか

と書いています
(『アルバム・山之口貘』船越義彰「指笛鳴らしカチャーシー」より)

今回は期せずして、簡単な
山之口貘の紹介になりました


本はあったのですが、なかなか読めずにいました

この機会を得て、幸いでした

参考にした書籍です









こんにちは、皆さま。

我が家のマリン。

耳の中や、身体のあちこちが
痒いというので

カビ菌?とかダニに
やられたかも、と病院へ
行きました。

予約がなかなか取れず

マリンは、なんとか
自力で治してくれていて

完治に近くなってからの
受診となりました。

念のため
抗生剤と痒み止めの注射を
してもらいました。


診療明細のマリンの写真(萌え!)


初診のときに院長先生が
撮影した写真が使われています。

毎日、元気で暮らしてくれている
マーリン。有り難う。


庭の木の小さな花は
アセロラ。
残念ながら、実にならず。

闘病中のブロ友さんや
ご家族が闘病中のブロ友さんの
回復を願っています。

時節柄、お訪ね下さった方々の
ご健康を祈ります。

今日もご訪問
有り難うございました。
お訪ねが遅くなると思います。申し訳ありません。



下の写真は、マーリンが
またねー(股ねー)と
挨拶しているところです。笑

女装が趣味のブロ友さんの
締めの挨拶のパクリです。