木曜島(もくようとう)

オーストラリア大陸の
北端にある面積3.5㎢の小さな島


トレス海峡諸島の人々は
ワイベン島(水のない島の意)と
呼ぶそうです


この島の周辺海域に生息する
白蝶貝(しろちょうがい)を採取するため

明治から昭和にかけて

多数の日本人が潜水夫(ダイバー)
として出稼ぎに行きました


白蝶貝は
高級ボタンの材料です


(シロチョウガイ、Wikipediaより)

(シロチョウガイのボタン、Yahoo検索画面より)


(yahoo検索画像です)

(木曜島、Wikipediaより)


司馬遼太郎氏の
「木曜島の夜会」は

主に大正から昭和にかけて
紀州から出稼ぎに行った
人々(ダイバーたち)の姿が
聞き書きのような手法で描かれ
ています


ノンフィクションに近いのでは、
と思います


(40年以上前に購入した本なので汚れています)


木曜島でのダイバー時代を
いきいきと述懐する
老人たちの語りに誘われます


貧しい家計を助けるために
木曜島に渡った方々です


日本から木曜島への出稼ぎの
きっかけとなったのは


Wikipediaによれば

明治初期に西洋式の近代灯台を
設置するため日本に滞在していた
英国人技師が

日本人を木曜島に連れて行き
白蝶貝を採取させたことに
始まるようです


それまで従事していた
ニューギニア原人や
マレー人などより


日本人は
「異常なほどに成果」を上げたと
言われています


ダイバーとしての資質が
他の外国人に比べて高かったと
いうこと

生命がけで
海にもぐるという精神性が

他の外国人より
日本人にはあったということは

次の分析に現れているようです


「日本人を特徴づけるものは、
彼等の精力と成功への強い衝動、
及び高い賃金を得たいという
熱望であった」
(オーストラリア国立大学のディビッド・C・S・シソンズ教授『1871〜1946年のオーストラリアの日本人』、本書掲載より)

ただ、この分析を見た
元ダイバーの老人は
「少し違うようにも思う」と
語っています


白蝶貝採取が
白人にも適しているかの実験も
行われたようですが


その成果は「ごく未熟練なアジア人に及ばず」だったようです(同上)


異国の海で
重い釜(ヘルメット)を被り
海底に潜った人々のドラマ


当時のダイバーたちの暮らしや
気概が伝わってきて
時代背景とともに
改めて興味深く再読しました






ただ、私が最も心惹かれたのは
島に残り、引退後の人生を
送っている藤井富三郎さん
(トミーさん)という
方のことでした

そこに、郷愁を感ずる
ドラマがありました


出稼ぎに行った方々は
潜水病で亡くなったり


第二次世界大戦時には
収容所に入れられ
戦後、日本に送還されました


トミーさんは
島の女性と結婚しており
作品中では
詳しい経緯は書かれていませんが
島に残ったのです


作品のクライマックスで
トミー夫人が
夫の"郷愁"の姿を
語る場面があります


年を重ね、バルコニーから
黙って海を見つめることが
多くなった夫


どんなに時を経ても
日本人であり続けているように
感じられる夫のことを

夫人は
夜会の場で、作者に切に訴えます


「富三郎は日本人がすきで
たまらないのだ。
日本人とみればこのように招待し
てそのくせ自分はバルコニーに
すわってぼんやりしている。
しかし私には富三郎の気持ちが
わかる。...」


「日本人は日本人だ」という
哀しみの叫びを発する夫人の姿に
胸うたれるものがありました


故郷に"帰ればいい"ということ
ではない人生があります


言いあらわしにくいのですが

"帰らない"、
"帰れない"と決めた
人生がある



そういう人生のカタチを
あらためて思う
作品でもありました


人の人生は
思うほど単純でなく
また、複雑すぎることでもない
だろう、と思っていますが


言いあらわすことのできない
思いの上に
人生は紡がれている


なんだか訳のわからぬ
言い方ですが


"望郷"とか"郷愁"という
ことばによって
かろうじて、その像(人生の姿)に
せまれるものでしょうか


タイトルの「夜会」とは
島で行われる集いで

何にもないこの島では
毎夜、どこかしらで夜会が
開かれていると語られています



次の古い記事には、作中の
モデルと思われるトミーさんの姿
が掲載されています

この記事に偶然、出会ったとき
創作の世界から現実へと
繋がったように感じました


作中の富三郎さんは
本名、富太郎さんのようです


下方は、トミーさんの部分拡大です
(1983年8月24日付 毎日新聞夕刊)




記事によれば
異郷の地で眠る
日本人ダイバーの墓は
700基以上

胸につまるものがあります


下の記事は、作品とは直接、
関係がありませんが
元パールダイバーの方が
登場しています

写真に写る前田義矩さんもまた
「日本に帰るつもりはない」と
語っているのが印象的でした
(記事の日付、出典不明です)


(沖縄でとれる島バナナ、小ぶりで皮が薄く甘酸っぱい美味しさです)


皆様、こんにちは。
ご訪問戴き、有難うございます。

時間がなくて
古いメモから記事を
起こしました。


花やバナナは
散歩で見つけた一コマです。

野山を彩る"ノアサガオ"は
ちょうど清明のころなどに
懐かしく出会う花です。

コロナの話題では、最近
米・加州で主に検出される
変異株が、
国内の検疫以外では、沖縄で
初確認されました。

日々、気をつけて暮らす毎日。
皆様もどうぞお気をつけ下さい。