今回は
井上ひさしさんの講演録より
書いてみます


(ああ... また長くなりそう
お時間あるときに...)


井上さんは
皆さん、よくご存知だと
思います


1936年、山形生まれ
2010年に、75歳で
病没されています


その彼が

若い頃に、ドモリに
なったこと


そのドモリ克服の
いきさつが


「戯作」の世界に触れて
語られています




私が子ども時代
テレビでみた


人形劇
「ひょっこりひょうたん島」


その作者が
井上ひさしさん(➕山元護久さん)
だったことは


大人になってから
知りました


この人形劇は

北杜夫(もりお)さんの
「船乗りクプクプの冒険」から
着想を得て創作された
そうです



講演のタイトルは
「わたしにとっての戯作」


(ドモリのことや
様々な生活環境については
彼の語る話に沿ってのみ
書きます)


彼は、10代のとき
仙台から上京した途端


ドモリ、になったそうです


ドモリになったわけは


ズーズー弁が
恥ずかしかったから


ドモリ、の方は
タ行、が苦手らしいです


当時、駅の切符を
買うのは


すべて
窓口での対面式でした


彼は、アルバイトのため
立川に行きたかったのに
タ行、の
「たちかわ」が言えない


運賃地図を見上げ


次は日野駅だから、ハ行...


ハ行も、ドモリの方は
苦手らしく


次の、豊田(タ行)
次の、八王子(ハ行)


もダメということで


... とうとう甲府までの
切符を買ったといいます 


アルバイト代は
切符代で
無くなってしまったそうです





吃音矯正の訓練も
しました


雑誌で
「ひと晩でドモリが治ります」


というような広告を見つけて
申し込んだら


「沈黙は金。
できるだけ喋らないように
しましょう。
喋らなければドモリは
おきません」


などと印刷された
紙1枚が


送られてきたそうです


( 詐欺!ですね)


井上さんは
一時期、ドモリの方たちの
自主グループにも通い


発音練習や歌を
歌ったりしました


戯曲『日本人のへそ』では
このグループの方たちの
ことを扱ったそうです


そのグループで、彼は
いろんなドモリの症状を
見たようです


ドモリ、は単に
ことばだけに発生するので
なく


身体も、ドモルらしいのです


たとえば
ある大学のサッカー部員は
絶好のパスが来たときに
シュートに失敗


そのあとから
彼は、似たような場面で


ボールを蹴ろうとすると


足が
「トトトト」と、土に


ひっかかるようになった
そうです


ドモリ、は自分の気持ちを
込めようとするときに
おこる、とも


そんなふうに
井上さんは
一生懸命、頑張ったけれども


ドモリがますます
ひどくなって


結局、3カ月くらいで

上述の
切符も買えないような
状態になって


大学をやめ
実家に帰りました


母親が営んでいた
屋台の手伝いをして


焼鳥をタレに仕込んだり
していたんです


実家といっても
家は、なく


終戦後にできた
急ごしらえの赤線地帯にあった
洋服屋の2階に

間借りしていたそうです


そこは
家屋が密集した地域で


部屋のすぐ向かいには
娼家があり


ある晩、そこの女性から

こっちにいらっしゃい
半額にしてあげるからと
誘われたのですが


女性の前で、こうありたい
という理想の自分と
現実とのギャップなどを感じて


結局
行けなかったんです


そんなこともあって

男としても
「自分はダメだあ」と

気持ちがちぢこまり


ますます
「偏屈な人間」になった
と語っています


焼鳥の仕込みや
店の開店準備の空き時間には

映画をみたり
図書館に通ったりしていました



そんなある日
彼は、図書館で

『黄表紙百種』という本を
偶然、目にし


何だろうと思って読んで


「腰を抜かすほど」
驚いたそうです


荒唐無稽な話が
書かれていたんですね


黄表紙というのは
戯作といわれた
江戸期頃の大衆挿絵文学の中の
ひとつだそうで


彼がその時、最初に
読んだ作品は


「親敵討腹鼓」
(おやの かたきうつや
はらつづみ)というもので


「カチカチ山」の後日談を
書いたものでした


「カチカチ山」で
ウサギがタヌキを討ったあと

子ダヌキが
親の仕返しをする話に
なっていて...


(ここでの「カチカチ山」は
残酷な話の方だと思います)


.... タヌキが涙ながらに、
「親の敵、思い知れ」と
ウサギを真っ二つに斬ると


頭のほうが、鵜(ウ)になり
下半身が、鷺(サギ)という
鳥になった...という話


さらに、これには
追加の後日談もあり...


ある年、日照りで江戸に
ウナギとドジョウが
なくなり


以前、ウサギが世話になった
ウナギ屋が
困り果てていると


どこからともなく
例の、鵜と鷺が飛んできて
お腹のものを吐き出す


それが全部
ウナギとドジョウだった

それを売り出し
ウナギ屋は大繁盛


ウ、とサギが
反吐(へど)を吐いたものなので


「反吐前ウナギ蒲焼」として
売り出しますが


語感がよくない、と言われ


「反吐前ウナギ」を
「江戸前ウナギ」に改めたと...


そんな話を読み終えて


彼は
しばらく、アゼンとしました


ウサギを2つに斬ったら
ウ、と、サギになったとか


「反吐前」を「江戸前」に
しただとか


こんなものを活字にして
いいのだろうか...


いや、でも、現にちゃんと
活字になっているじゃないか


そんなことに
こだわっている自分の方が
よっぽど変だ...


自分のこれまでの
心のこわばり、が


滑稽に思え
笑えて仕方なかったそうです


そして、その笑いが
おさまったとき


彼は
自分の身体が軽く
柔らかくなっていることに
気づきます


コトバで他人に笑われるのが
恥ずかしい


屋台の息子だから
肩身がせまい


他人から
つまらない男に見えると
思うと辛い


そういうふうな

屈託(くったく)が
いっぺんに吹っ飛んで
しまった


ここに
バカバカしいムダな作品が
あって

それが
自分を、ときはなしてくれた


だとすれば
「馬鹿なもの、ムダなことにも
値打ちがあるのだ。...

馬鹿でいい、ムダでいい。

これからは
キリキリせずに生きて行こう。
気楽にやっていこう」


井上ひさしさんは
そう考えたのです


『黄表紙』の中で
彼がいちばん熱愛した作品は


唐来参和という人の
「莫切自根金生木」
(きるなのねからかねのなるき)


主人公は万万先生という人で

彼の悩みはただひとつ

金がありすぎること 笑

なのでいろいろ
散財する策を考えて実行
しますが

すべてが裏目に出て
金がどんどん集まってくる
という話


その話を読んで


すべてのものごとの表裏を
一度、ひっくり返してみる

という知恵を学び


いろんな、ちょうつがいが
はずれて、自由になった


そんな経験があったのち


気がつくと


いつのまにか
ドモリ、が治っていた
らしいのです


以下、井上さんの説明では


ドモリはなぜ起こるか
他人を中心に世界が回っている
と思い込む人がかかりやすい


相手の土俵に乗って
自分を捉えてしまう


日本人に
ドモリが多いのは

必要以上に相手のことを
気にするからだと

と説明しています


戯作である黄表紙は

「まずぼくの心を外に向かって
大きく開かせて」くれた


そのおかげで
「コトバも取り戻す」ことが
できた


さらに
「黄表紙はぼくに思考道具を
与えて」くれたと
語っています


彼は『黄表紙百種』を
ぜんぶ読んで感動したので


その百篇を、2年ほどかけて
すべてノートに
書き写したそうです


黄表紙によって
心の中の屈託を
取り除くことができた彼は


その後
自分でも呆れるくらい
図々しくなれたそうです


私は井上ひさしさんの
いい読者ではないのですが


こうした文章に
若いころ出会い


黄表紙の世界の
一端を知って
面白いなあ、と思い


人生のあれこれを
考える場面で


開きなおり、みたいな感覚が
生まれたのかもしれません


今回、久々に
講演録を再読して...
やっぱり面白い


バカバカしい笑い...


お亡くなりになった
志村けんさんの笑いにも

通ずるものが
あるでしょうか...


今回、参考にしたのは

1977年11月9日
東京で行われた
〈岩波文化講演会〉の講演録
岩波書店『図書』342号所収

......  ......  ....... 

皆さま
今日もご訪問、有り難く
思います


いま、ようやく
井上ひさしさんの
『吉里吉里人』読書開始


東京から青森に帰省するときに
よく利用した夜行列車
「十和田」に触れられている
ところまで読みました

すでに、笑いあり、です


今日の庭の花は
ドラセナ・ソング・
オブ・インディア

数年に一度
花をつけるそうです


さて
いろんな手作りマスクを
拝見していますが

新たなアイデア!

ソックスを利用して
縫わずに簡単に作れる
マスクを知りました


ご興味のある方は
検索してみて下さいね


感染ゼロだった石垣島で
感染者2名、でました

離島の病床は、わずか
石垣での会議風景を見ると

マスクはしているものの
人が密接しています


そんな会議風景を
あちこちテレビで見ます

コロナ感染対策の会議なのに
危険ですね


全国の医療関係の方々の負担を
少しでも減らしたいです


お仕事の方も、どうか
乗り越えて下さいね

さいごに
美しいアマリリスを添えて...