わたしの
可笑しみ(おかしみ)の
アンテナ...


太宰治の作品に
よく 反応します ...



昔、読んだもので
忘れられない作品


「貧の意地」


太宰が
世界で一ばん偉い作家と書く

井原西鶴(さいかく)の
「西鶴諸国はなし」から

気に入った作品を
太宰流に
アレンジしたものの一つ


再読したので
はしょって 
ご紹介してみます
(長いので、速読?を)





内容は...

貧しき武士たちの
酒宴にて
小判一両が行方不明になる、
巡ってのお話です  



武士と言えば 
ほら、アレ ですね


武士は食わねど高楊枝!


体面を重んじる気風だと
デジタル大辞泉にあります


(「  」は引用です。リライトあり)




はなしの舞台は
年の瀬の、江戸品川


主人公・原田内助は
中年の貧乏武士

大柄で髭づら
その姿に似ず 小心者


食えないような面も
あるけれど....

その、こころ持ちは
私には
憎めないところあり  


さて、主人の原田

今年も
借金取りが来ると
気がふれたマネなどをして
追い払い


万年床
天井の煤も払わず

今風に言えば
汚家? に住んで

にっちもさっちも
いかぬ暮らしぶり


いたたまれぬ女房は
裕福な兄に
「涙ながらに窮状を訴え」
金を借りてくる

この兄
「親戚にひとりぐらい、
そのようなバカがいるのも、
浮世の味」と
十両入った紙包をもたせる

紙包みには
「貧病の妙薬...」と
シャレた書きつけあり


主人の原田、それを見て


突然の幸福に

このまま使うと
果報負け がして」
死ぬかもしれぬと 笑


妙な理屈をこね  


長屋の友人に呼びかけ
雪見酒と称して
酒宴を催す


.... なに、嬉しさで、ただ
酒が飲みたくなっただけ
とは太宰の筆なり


招かれた貧の浪人は7人

老人・山崎
大竹
短慶坊ほか


何ぶんにも 貧窮ゆえ
身支度に
「傘は無いか、足袋は無いか」と狼狽し

「女房の小袖を裏返し」に
着てくるものあれば

「裾から綿のはみ出た
どてら姿」のものもあり

とにもかくにも

あり合わせのもので
とり繕い  参集

誰ひとりとして
まともな 出で立ち無し




さて
「貧しいながら、酒肴を供し」

酒宴が始まると

あるものは
盃を持って手が震え

「それがしは、貧のため、久しく酒に遠ざかり、お恥ずかしいが酒の飲み方を忘れ申した」と いえば


また、あるもの
「二、三杯つづけざまに飲み...
このさきどうすればよいのか、酒の酔い方」を忘れたという


一同
似たりよったりとみえて
酒座はしんみり


そのうちに
酒の酔い方を思い出し  笑

陽気になる酒座



主人の原田は

酔狂に

久しぶりの十両は
なかなかに重い

この「貧病の妙薬」を

皆に回して
味わってもらおうと 
押し付ける


この小判、それぞれの手を
回って やんや やんや


さて、何ごとも
「格式を重んずる」武士

これにておいとま、と
分別顔で礼をいい

そこいらを片付け

主人の原田にも
取り散らかった小判を 
片付けなされと
すすめる


原田、小判を集めて
ハッとする


一両 足りないのである


原田、このとき

素知らぬ振りで
何ごともなく済まそうと
するが....


老人・山崎
それを見逃さず


原田が
いや、一両はすでに使って
九両だったと
言い訳するも


皆のもの、確かに十両
あったと言い出す


皆で  行燈を持ち
部屋の隅々まで探せど
小判は見当たらない


そこは武士

老人・山崎
やおら立ち上がり

「この上は、それがし、まっぱだかになって身の潔白を立て申す」
貧の意地...あらぬ疑いをこうむるは末代までの恥辱」とばかりに

陣羽織を脱ぎ

さらに
「よれよれの浴衣を脱いで、ふんどし一つになり、投網でも打つように大袈裟に浴衣」を振るう


ついで
大竹というものが立って 
夏羽織、半襦袢を振り
馬乗バカマを脱いで

「ふんどしをしていない事を
暴露し」  笑  

ハカマを逆さに振るう


次に立ちたる
短慶坊というもの

懐に たまたま
一両 持ちあわせている
不運を嘆き

身の潔白をたてるため
ここで切腹を、という


誰もそなたを
疑ってはおらぬと
なだめても

いや、それでは
気がすまぬ、と
なおも切腹の勢い


騒然とする酒座


そのとき
主人の原田

行燈の下にキラリと光る
小判を発見!


なんだなんだ
そんなところにあったのか

皆のもの、人騒がせと
安堵するとき


あれ! と驚く女房の声


「小判はここに」といって

重箱の蓋にくっついている
小判を持ってくる


!!


小判は
合わせて 十一両


老人・山崎
これは、あやかりものだ...
めでたい... と言い

最初から
十一両あったに違いない
などと 

てんでに
適当なことを言って
原田におしつけ

ことを収めようとするが


主人の原田

十両の金が
十一両に化けるなど
冗談ごとよ

きっと、どなたかが
窮状をみかね
そっとお出しになったのだ

情けの一両なのだ...

「十両持っているのさえ、わしは心苦しく...さらに一両を押しつけられるとは....」

「原田内助、貧なりと言えども武士のはしくれ... 」と 力み

「一両をそっと置いた人格者は名乗りでよ」と  ねばる


善行者
ますます名乗りがたく
一同、無言


主人の原田
それではと

この一両
重箱の蓋に載せて
玄関の隅におくので
お一人ずつお帰りになり

小判の主は
黙って持ち帰ってほしいと
提案す


7人の客が

順番に辞したあと

玄関の小判は
なくなっていた


末尾は、女房の描写で
終わる


「....落ちぶれても、武士はさすがに違うものだと、女房は可憐に緊張して...(夫の) 酒の燗に取りかかる」(了)




......................



いや  人騒がせな
 一晩である  笑


武士の意地
おかしみが織りなす
一夜(ひとよ) の酒宴


それがし(本来は男性ことば)
太宰の筆致に酔い申した 笑 






太宰は

昭和19年 晩秋
空襲警報下にあって

1年ががりで
西鶴の諸国はなしをもとに
12作を ものしました
(新釈諸国噺として刊行)


太宰は
この仕事によって

「西鶴のその偉さが、さらに深く皆に信用されるようになったら、私のまずしい仕事も無意義ではないと思われる」と書いています(凡例)

また、「日本の作家精神の伝統」を知らすのは、「作家の義務と信じ...むきになって書いた」とも(凡例)


このたび
西鶴の原本も読み

改めて太宰の筆になる
「空想の按配」(凡例)に
感嘆しています

はなしこ・話芸の天才!


人間描写の
絶妙な面白さ... は


太宰の本で
味わっていただくほか
ないのですが


この不躾? な作業
お許し下さいますよう...






さて、最近のこと

入水自殺した太宰に寄せる
文を読みました

胸がキュッとしましたので
抜粋してみます

国文学者・折口信夫の

「水中の友」
という文章です


.... 何げない貌(かほ)で
死んで行ったがー
 
ほんたうに
遠く靜かになつた人

もういつまでも
ものなんか
言はうとしないでもよい。

私のまぶたを温める
ほのかな光りを
よこしてくれ 

(角川文庫『人間失格・櫻桃』解説文)


きょうの庭の花は
可憐な
リュウキュウハギ... 


お訪ねに感謝します
皆さま、お元気で!