無難聴性耳鳴 | 耳鼻科医として、ときどき小児科医として

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以前にアメブロで書いていましたが、一時移籍し、再度ここに復活しました。専門の耳鼻咽喉科医としての記事を中心に、ときにサブスペシャリティな小児科診療のこともときに書いていきます。

無難聴性耳鳴というものがあります。難聴がないにもかかわらず、耳鳴が起こる状態です。無難聴というと、難聴がないように思われてしまいますが、僕は難聴がないのではなくて、難聴が指摘できないというべきだと思っています。つまり、どこかに難聴がある場合がほとんどだと思います。

 

耳鼻科での聴力検査は、下記グラフのように、1000Hzを中心に、7周波数を調べます。あくまでも、この調べた周波数域には異常がないということにほかなりません。その多くは調べていないのです。

 

騒音性難聴は4000Hzだけが落ちる、C5dip型というのが特徴的です。2000Hzも8000Hzも正常なのに、4000Hzだけが落ちてきます。大学にいたころに、上司の先生が、4000Hzだけ落ちると言うのはおかしいのではないかと別の周波数も調べていました。すると、6000Hzだけ落ちている人もいるのに気づいたのです。6000Hzは普通の聴力検査では行わないので、その周辺に難聴がなければ、聴力に異常なしと思われてしまうわけです。騒音が4000Hzを中心にした高周波数が悪くなるのは間違いないのですが、普通の聴検ではひっかからない領域に異常がある人もいます。それは聴力正常と言われてしまうわけです。

 

下のグラフのように年齢とともに、聴力が落ちてきます。加齢性難聴は年とともに進行します。普通の聴検では8000Hzまでしか調べず、異常があるとかないとか言っています。8000Hzより高い音はどうなっていると思いますか?実は、確実に年とともに落ちているのです。つまり、右肩下がりのグラフになるのです。高音周波数帯域は、日常会話にはあまり影響がでないので、難聴が軽いのであれば、何も問題ありません。聞こえには問題なしという意味では、異常なしの判断になります。

 

ところが、耳鳴となると話は別です。加齢による耳鳴とは、内耳細胞の一部に加齢性変性がおこる現象です。低音部でも、高音部でも、どこかに変化がおこれば、耳鳴はでます。聴力検査で異常がないというのは、あくまでも通常の聴力検査で確認できる範囲の話です。8000Hzよりも高音域はまったく検査していないのですから。

 

耳鳴がすると当院を訪れた患者がいました。50歳中ごろの年齢です。4000-8000Hzに40dBほどの軽い難聴があります。難聴が軽いので、異常なしと言われたそうです。聞こえには問題がないのかもしれませんが、すでに高音域が落ちていて、加齢による影響を疑います。8000Hzよりも高い領域はもっと落ちているはずです。僕は加齢性難聴による耳鳴と説明しました。耳鳴というのは、一部にでも難聴があればでてくる可能性はあります。それが通常の聴力検査で異常指摘できないかもしれません。

 

検査というものは、異常が見つかればわかりやすいのです。ところが、正常になってしまうこともかなりあります。この人の場合には、異常がでていていも、その異常をたいしたことがないと見逃されてしまうのです。

 

症状がでているのに耳鼻科を受診してくるわけです。検査で異常がなくても、何が問題なのかは考えて説明する必要があります。何らかの異常が起こっているのは間違いないからです。