脱走したアイガモ 海に住み着く | 野人エッセイす

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森羅万象から見つめた食の本質とは




野人のマリーナで飼っていたアイガモが4年前に海に脱走した。そしてそのまま近くに住み着いている。元々アイガモ農法に酷使され、お役御免になり食われる運命にあったのだが、可愛そうになった野人が6羽の身元を引き受けた。敷地は7千坪以上あるし、小屋を作り放し飼いにしていた。残飯は毎日出るからエサには困らなかった。

ところが敷地には天敵の先住民がいた。狸の一家だ。猫もたまにやってくる。河口の奥の人工島になっているのだが、テクテクと私設の橋を渡って猫も散策にやってくるのだ。狸は大雨で山から流されてきた奴が流れ着いて草むらに住み着いたようだ。周りは町で山などないから歩いてくるはずがない。以前に子狸が調理場に入り込み魚のタモ網で捕獲、お尻ペンペンして放してあげた。芝のグラウンドの真ん中に「ケリ」と言う中型の鳥が毎年巣を作り、近づく客を空から威嚇、閉口して巣の周囲に柵をしたこともある。「近づくな、この鳥凶暴なり」と表示もしておいた。子供達は巣の卵を覗き込んで喜んでいたが、空から口ばしの攻撃を受けていた(笑)。周囲の草むらではなく芝の真ん中に巣を作ったのはわけがあった。周囲は狸の縄張りで毎晩周回していたのだ。アイガモも狸に襲われ二羽が仏門へ入った。夜はしっかりと小屋に鍵をかけたが、狸が小屋の前の地面を掘った跡があったからさぞかし恐怖に晒されたことだろう。それから昼間は毎日そろって思いつめたような顔して堤防から海を見ていたのだが、ある日目の前で揃って海へと飛び立ったのだ。田んぼで切られていた羽根も飛べるようになるまでになったらしい。アイガモが大脱走してからは寂しいような良かったような複雑な気持ちだった。本音は・・「野人の非常食にしようかと」・・可愛がる女性社員を見ていると食うのはまず不可能だったろう。狸のせいにしても良いのだが良心が痛むのだ。脱走してから1週間が過ぎたが、帰って来ることを期待していた。それがある日トコトコ歩いて帰って来た。周囲の海に住み着いていたのだ。海と言ってもやや汽水域だ。ご飯をやるとガツガツ食っていたが、食い終わるとまた列をなしてトコトコ歩いて海へと帰って行った。それから今日に至るまでの4年間3日に一度くらいは里帰りしてメシを食っている。狸にやられたのか今はオスとメス二匹のつがいだけだがすこぶる元気だ。一時数が増えていると思ったら野性のカモが一羽加わっていた。ただ、いつも仲間はずれにされていたようだ。泳いでいるのを見かけるとスタッフがご飯をやるのだが、その時の合図は手を叩く。それを周囲の住民が見ていて対岸で流行、子供達がパンくずなどをやって喜んでいた。アイガモは、手のなる方向へ行くクセがついてしまったようだ。この写真は手を叩いて寄って来たカモを撮ったが、エサをやらなかったのでやや・・スネている。エサはやらなくても彼らは逞しい。カニやエビや小魚、時には泥の中に首を突っ込んで獲物を獲っているのだ。草も食っている。海は食い物の宝庫だ。アイガモは自由を謳歌しながら牡蠣だらけの海で快適な暮らしを送っている。アイガモは食用に人間が交配した種だが、野性で暮らせるアイガモは滅多にいないだろう。アイガモはアヒルとマガモの交配種、野生のマガモと交配すると自然界にはあまり良くはないが、あの夫婦の絆は強く、オスは他のカモを寄せ付けずしっかりとガードしている。それに人間のオスのように浮気もしないようだ。オシドリと見間違うくらい仲が良い(笑)。二羽とも寿命をまっとうしてもらいたいものだ。