人生を変えた一冊の本 | 野人エッセイす

野人エッセイす

森羅万象から見つめた食の本質とは

誰にでも子供から大人になる時期はある。

思春期から徐々にそうなっていくものだが、野人はたった一日で切り替わった。

 

高2の時に一冊の本との出会いがなければ、やはり徐々に自我を確立して大人になって行ったのかも知れない。

その本は当時も読み終えていないし、それから今まで開いた事は一度もない。

 

野人は勉強嫌いで予習復習などやらなかったが、中学高校の時からたくさんの本を読んだ。

海や山で遊び呆けていただけではないのだ。

世界文学全集も面白くないが一応読み終えた。

 

しかしこれほど強烈な本には出会ったことがなかった。

本の名前は確か「聞け、わだつみの声」だったと思う。

特攻で散っていった同年代の少年の遺書をそのまま本にしたものだ。

 

同年代なのに、生き方のあまりの違いに衝撃を受けた。

彼らはまだ遊びたい盛り。戦争などしたいはずもなく勇猛果敢で血の気が多いわけでもない。

家族や愛する人達を守る為に自ら志願したのだ。

 

それぞれの遺書には切実な愛情が溢れ、泣けて最後まではとても読めなかった。

その夜に自らを振り返り、たった一日で自分の生き方がはっきりと決まった。

それまでは食うこと、海山で遊ぶ事、寝ること以外は考えた事がなかった。

それらは親の保護下にあれば容易い事ばかりだ。

 

生き方とは職業ではない。

一流大学や職業などますますどうでもよくなったのだ。

マイホームを持って豊かな家庭を持つなどまっぴら御免だった。

その時が本当の「野人」の誕生かも知れない。

「どのように生きるのか」を決めたのだ。

 

散っていった彼らは死に方は撰べても生き方は選べなかった。

それを感じて自分のそれまでの生き方がとても恥ずかしく思えた。

日本の平和は、彼らも含めて数百万の戦没者によって築かれたものなのだ。

 

野人の父も戦地で結核にかかり、闘病生活が長かったが野人が一歳の時に死んだ。

その父の母、野人の祖母は、空襲で焼け出された孤児達を集め、毎日食べものを分け与えて餓死の道を選んだ。

大袈裟かも知れないが、野人は彼らの意思を引き継ぎたいと思った。

 

戦争は嫌いだが、生命は彼らが守ろうとした国に捧げようと決めた。 しかし愚かな国には捧げない。

本当に国家、国民の為になるのなら礎になって、その為に命を失っても構わないと思ったのだ。

 

たった一日で、一番大切なものが「自分の命」から「人間としての誇りと使命」になり、そして迷わずその道を選んだ。 海に囲まれた日本の海洋開発だ。

 

当時は「シーラブ計画」「シートピア計画」が進行していた。 海底居住計画、資源開発、深海への挑戦だ。

先陣を切って海の底深く行く為に海洋学者になろうと決め、フランスの海洋学者「ジャック・イヴ・クストー」に弟子入りすることにした。

 

その為に東海大学海洋学部を選び、そこしか受けなかった。

船舶や実験室を持つ海洋学部は当時全国でたった一つしかなかったのだ。

 

やがて営利しか念頭になく、ビジョンもない国家や企業に失望、南米放浪を決めたが、結局ヤマハ社長のボディーガードをやることになってしまった。

その辺のいきさつは「連載 東シナ海流」に書いた。

 

今は食糧問題に取り組む為にこの会社を興し、目標に向かって余命を燃やしている。

今日は終戦記念日だ。

野人の生き方は17歳のあの時から全く変わってはいない。