タコ踏んじゃった4 ドンキホーテとタコ | 野人エッセイす

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森羅万象から見つめた食の本質とは

以前、名古屋テレビの番組で、アウトドア特集の「レッツ・ドンキホーテ」と言うロングセラーの1時間番組があった。「仲本賢」隊長以下3人がレギュラーだ。その番組から協力依頼があったのだが日程に無理があった。当時、マリーナの責任者で真夏は多忙、お断りしたが、あちらはその日しかないらしく、仕方なく引き受けた。聞けば、素潜りでタコ獲って浜でスモークにしたいが、他に何か面白いアイデアはないかと言う。結局、企画も含めてスペシャルゲストで参加させられることになった。

当日スタッフも含めて十数人の撮影隊を朝からマリーナで待たせていた。大事な仕事を済ませて、「さあ行きましょう」と桟橋へ行くとディレクターが言った。「あの・・その格好、もっと何とかなりませんか、海らしい格好で」と注文をつけてきた。長ズボンに普通のシャツと靴だったのだ。海パンとタンクトップに着替えて撮影は出航から始まった。27フィートのボートとマリンジェットに分乗、撮影用にもう一隻ボートを用意した。番組タイトルは「浜の豪華キャンプ」になっていた。漁協には事前に了解を取り付けて来た。潜ってタコは潜るが「アワビ、トコブシ」などは獲らないと。撮影隊は無人の浜にボートで上陸、ベースキャンプを作った。午前中は食材の「磯物がり」と磯ウォッチングで野人が「磯はかせ」を努めた。ジンガサは焼き鳥みたいにタレを付けて「串焼き」、カメノテや小さな巻貝は茹でる。ジンガサ中心のパエリアも作る。しかしメインディッシュはあくまで「タコ」だ。午後からはドンキホーテ隊が潜ってタコを獲る予定になっていた。豪華キャンプのラストシーンは夕日を浴びながらの夕食で、ランチタイムは持ってきた弁当だ。全員が浜で弁当を食べている時ディレクターが言った。「本当に、タコ・・獲れますかねえ」。「目の前にもいくらでもいる」と言っても誰も信用しない。仕方なく皆が弁当食べている目の前の浜にジャブジャブと腰まで入り、水中眼鏡で覗いた。距離にして20mくらいのところだ。1分もしないうちに「ホレ!」と手を差し出したが、手には大きなタコが握られていた。全員、弁当食べる手が止まり、目はテンになっていた。「まだ・・潜ってもいないのに・・」と不思議がるから、「タコとはそんなもんだ」と答えた。タコはドンキホーテ隊が獲れなかった時の「保険」代わりにバケツで飼育されることになった。演出としては浜からすぐより、ボートで湾内にアンカーを降ろし、飛び込むほうが格好良い。カメラがまわる中、5人は格好よく飛び込んだのは良いが、30分経ってもさっぱりタコが獲れないのだ。「保険ダコ」の出番だが、もう一隻のボートが保険タコを取りに行った時、タコはすでに暑さでノビていたのだ。仕方なく、ディレクターは野人にタコ獲りシーンを依頼。船から飛び込み、3m進んだところで潜った。その間わずか10秒だ。浮上した手にはタコが握られていたが、カメラはあっちを向いていた。まさかそんな早く獲るとは思ってもいなかったらしい。「すみません・・もう一度潜るシーンから・・」。おかげでテレビを見た連中から「ヤラセだ~!」と疑われてしまった。タコは塩もみされ、セロリ、ニンニク、コショウなどの香辛野菜に漬けられた。丸一日漬けるのが良いが時間がなく即席だ。彼らの考案で、前夜に1リットルのビール缶が燻製器に改造され、タコはその中で吊るされてスモークされた。2時間の温燻製だ。夕食には収穫したご馳走が並び、夕日を浴びながら祝杯をあげたがタコのスモークは・・硬すぎて・・失敗だった。しかしそんなことは問題ではない。硬くても人には歯があるのだ。しっかりと噛めば旨い事には変わりない。晩餐は収録中とは思えないほど楽しくて美味しかった。終わるとスタッフも一緒に加わり、日が暮れるまで盛り上がった。一日がかりの苦労が報われたようだ。