農耕の歴史は浅く、はるか古代より人類は採取、狩猟で生命を維持して来た。今も変らず営まれているのが漁業で、忘れ去られつつあるのが木の実、山菜だ。飢饉や戦後のように食糧危機が来る度に人の命をつないで来た。これらのものは栄養、生命力共に今の果物、野菜とは比べ物にならない程優れている。特に木の実は大地の恵みそのものだ。品種改良されたものは大きさ、色、艶、糖度と、食品として申し分ないが、野菜も含めて見た目が重視されている。野菜にしても昔のトマト、キュウリの味を懐かしむ人が多いのではないだろうか。なぜ姿形が同じなのか、消費者と販売者の思惑が優先されているようだ。身近な木の実としては、5、6月にはキイチゴ類多種、6月桑の実、グミ、7月はヤマモモ、8月イヌビワ、9月マタタビ、エビズル、シバグリ、10月アケビ、ムベ、サルナシ、ヤマボウシ、シイ、11月ハシバミ、ブナ、アキグミ、シャシャンボ。生で食べられるものだけでもこれだけある。キイチゴはカジイチゴ、クサイチゴを始め10種類程近辺にあり、グミも数種利用出来る。8月から9月にかけて野山のどこにでもあるのがイヌビワで、古代イチジクと呼ばれている。縄文式土器より種子が見つかり、古代人の貴重な食糧とされていた。遣唐使の時代、大陸より現在のイチジクが伝えられ、味も形もよく似ていたので名前が移り、それまでのイチジクはイヌビワになったとされている。ただしサイズは指の先程で、ビワには似ず葉もイチジクに程遠い。地元ではチチモモと呼ばれ、イチジクの様に摘むと乳液が出る。黒く熟したものはねっとりと甘くイチジクそのものだ。シバグリは小粒だが改良されたものより味が濃厚ではるかに美味い。サルナシはナシの味ではなくキウイの原種だ。輪切りにするとキウイそのものだがなんとも言えぬ芳香があり、甘酸っぱく濃厚だ。生食、ジャムも良いが、果実酒にして国内では最高のものが出来る。鹿児島以南からアジアに分布するシマサルナシ、同じ仲間のシナサルナシがキウイの原種で、これがニュージーランドに渡り、改良されて、野鳥キウイに似ているところからキウイと名が付けられた。従ってキウイの原産地はアジアだ。屋久島ではコップンと呼ばれ、戦後の食糧難の時よく食べられていたが、今では野生のサルが独占している。子供の頃より毎年、海、山の自然の恵みを食して来たが、小学生の頃これらのものは宝物、青年期は色々な食べ物に目移りし、現在に至っては人間本来の食べ物ではなかろうかと思うようになった。最近、遊休地を再利用し、国内全ての木の実、山菜、キノコ、薬草、有用植物を育てようと考えている。また、ヤマモモ、キイチゴ類、桑の実をシャーベット、フルーツソース等に加工、普及出来れば、山林の有効活用に役立てる事が出来るかも知れない。これらのものは、農薬、肥料、手間をそれほど必要としない。