極端な話、東シナ海上空を飛んでいる日本の飛行機を領空侵犯だと判断して打ち落とす口実を得たようなもので、いわば戦争の準備を宣言しているに等しい。
私はそのニュースをネットで見て仰天してすぐテレビをつけたのだが、テレビでは秘密保護法案批判を延々とやって、この深刻なニュースはさらりと触れるだけにとどまった。さすがに呆れる(おまけに、今日の報道番組ではコメンテーターが「この日中の危機は、粘り強い対話を通して切り抜けるしない」などと無責任なことを言っていた)。
実は、最近、有能で良識派とされる複数の評論家が「中国は安倍外交の包囲網で、妥協を考え始めている」といったことを言い始めていた。こういった論調に違和感があったのだが、もしかしたら素人の違和感のほうがまぐれ当たりしたのかもしれない。ことは最悪の事態に向かいはじめているように思える。
では、私が考えたことをざっと述べてみたい。
本ブログでは何度が言っているのだが、中国は一枚岩ではない。中国は政府・軍・人民の三すくみの緊張状態にある(→過去ログ)。
たとえば、経済成長がうまくいって人民が政府を支持すれば、軍が外国に緊張をもたらすのは「余計なこと」であり、軍の勢力は縮小する。逆に、経済が停滞して人民が政府に不満を持てば、「沖縄は本来は中国のものだ!」などと言ったプロパガンダが広まり、軍の対外緊張拡大路線が支持されて、政府は守勢にまわる。
習近平政権の課題は、この三すくみ状態を脱して共産党による安定支配を実現することにある。
そのためには、経済成長を果たし、格差を縮小させ、地方政府や軍の不正をただすことが必須である。
私などそんなことは無理だろうと思ってしまうのだが、それでもやらなければ中国共産党は崩壊に向かう。習政権は無理を承知でやらなければならないのである。
ただでさえ難しい状況の中で、習近平はいきなり前政権からの尖閣諸島問題をという超難題をつきつけられてしまう。なぜこれが難題かと言うと、「尖閣は中国のものだ!」というスローガンは反日感情を持つ中国人民にとって魅力的であり、軍が自分たちの勢力を拡大するのに格好の材料だからである。
習近平はスタートからどでかい爆弾を抱えさせられたようなものだ。
だから、習政権の課題は尖閣問題を最大限に穏便に抑えながら軍の勢力拡大を抑えて、できるだけ多くのリソースを経済成長に向けるという、相当にややこしいものになってしまっているわけである。
しかも、日本側がこれまで与しやすかった民主党政権から、巧みな外交力を持つ安倍政権になってことが痛手となった。日本は冷え込んだ日米関係を修復して、TPPにぎりぎりのタイミングで参加し、東南アジアからインド、ロシアにまでの中国包囲網をしき始める。
中国軍の対外緊張拡張路線は、これによって手詰まっていく。
さらに国内では、共産党の一党独裁がゆらぐ事件が起こる。収賄罪で無期懲役となった薄煕来の支持者らが、なんと国内で新たな政党を発足させたのである。ネットでの宣言ではあるが、これまでなら考えられないことである。
さらに、天安門への自動車の突入で、ウイグル自治区で独立運動が活発化していることが露呈している。これまで力で抑えつけていた自治区が、本気で独立に動き出し、それを抑え込むことができなくなっているわけだ。
これらを総合すると、「中国はすでに崩壊一歩手前まで来ている」(正確に言うと、中国ではなく、中国共産党の危機だが)と考えていいだろう。
だめ押しとなったのは第18期中央委員会第3回総会、いわゆる3中総会である。習近平はそこで経済改革と一人っ子政策の見直し、腐敗防止などをの政治改革と、対日強硬路線の継続とともに、「国家安全委員会」の設置を宣言する。
では、なぜ国家安全委員会が必要となるのか?
もちろん軍を監視するためである。通常なら軍のにらみによって治安を維持するのだが、軍自体を改革するには、別組織に必要となる。それがまさに国家安全委員会である。
表向きは地方や自治区の監視であるが、それなら従来の軍や警察で可能である。第三者機関が必要なのは、その軍や警察をなんとかしようと思っているからにほかならない。
それを聞いて軍幹部は烈火のごとく怒ったのではないだろうか。
中国軍にとって、さらに悪いニュースがやってくる。
フィリピンの台風被害で日米の空母がレイテ島に派遣され、沖縄の米軍基地に配備されていたオスプレイが大活躍して、フィリピンの被災者救助に大いに貢献してした(日本のメディアではなぜかあまり報道されていない)。
これは見方によれば、中国がフィリピンを攻撃したら日米が大戦力によって救出に向かう体制が整っているということを意味する。中国軍にとっては大きな脅威があること露呈してしまったわけである。
そこで、軍は影響力のある党幹部に働きかけ、縮小しかけていた対日緊張を再び拡大する起爆剤として東シナ海上空に防空識別圏を設定する。これによって、政治改革と経済改革(=軍の抑え込み)方針を根こそぎ葬り去って、再び軍の拡張路線を復活させようとしている、というのが私の想像である。
はっきり言って愚かこの上ない。だが、習近平が現在の状態をとどめることは難しいだろう。なにしろ、中国人民はこの政策を支持するのが間違いないからである。一歩間違うと日中開戦の可能性すらあると思う。
ちなみに、中国が設定した防空識別圏には済州島の制空権近辺に一部がかかっている。対中協調を進めている韓国にこの仕打ちをおこなったということは、今回の決定を、習近平が全く知らなかった可能性すらあるのではないだろうか。
日中関係が崩壊する前に、中国自体が崩壊しかねない気さえしてくる。

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