線維筋痛症と現在の精神科診断について
線維筋痛症と言っても、何から書けば良いのか少し困るといったところ。
今回はテーマの記事数をいつまでもゼロにしておくのはちょっと・・と思ったのもあり、総論的なことについてアップしたい。
元々、この疾患は近年新しく言われ始めた疾患概念であり、独立してこれが存在しているのか、あるいはもっと大きな疾患が別にあり、その表現型として優位に立つものをそう呼ぶのか微妙である。
精神科では統合失調症以外では、時々そんな風な疾患群があるので、またいつものことか・・と言う印象もなくはない。
精神科医は線維筋痛症や慢性疲労症候群は、命名されるずっと以前から抗うつ剤や抗てんかん薬、あるいは漢方などで治療してきたのである。だから精神科医から、「そういう疾患名はなくても良い」と言われたとしても、僕はその意見も十分納得できる。
線維筋痛症に限らず、慢性疲労症候群、疼痛性障害は身体や精神疾患の重複が多く、どのような基準で主病名にするのかが曖昧になっている。
線維筋痛症はリウマチ関連疾患であり整形外科で扱われることが多い。従って、整形外科が主体に診ている患者さんが多いように思われるが、リウマチではない人が精神科やあるいは麻酔科のペインクリニックなどで治療されるケースもある。
線維筋痛症はよく合併する疾患が疫学的に調査されている。
線維筋痛症の合併病態(日本)
関節リウマチ 33.5%
他のリウマチ性疾患 44.1%
非リウマチ性疾患 20.4%
他のリウマチ性疾患44.1%の内訳
シェーグレン症候群 24.7%
SLE 6.4%
強皮症 2.2%
ベーチェット病 2.2%
血清反応陰性脊椎症 2.2%
混合性結合組織病 2.2%
その他 3.2%
非リウマチ性疾患20.4%の内訳
間質性膀胱炎 5.4%
変形性関節症など 15%
僕の場合、既に整形外科で線維筋痛症として告知されている人が、疼痛や特にうつ状態で初診した際に治療する機会が多い。線維筋痛症と患者さんが言う場合、必ずどのような診察を受け、どのような結果から告知をされたか尋ねるようにしている。(近年、診断基準の変更があった)
線維筋痛症は結局は症状が軽くなり、日常生活の制限が少なくなるかほぼなくなれば良いので、どこで治療されるかは大きな問題ではない。しかし、他科では処方したことがないか、極めて使い辛いが、エビデンスレベルの高い向精神薬もあるので、精神科の治療水準はけっこう高いのではないかと思っている。
元々、線維筋痛症に推奨されている薬物は向精神薬が多く、エビデンスレベルも推奨度も高いものが多い。
例えばトリプタノールはエビデンスⅠ、推奨度Aである(海外)。エビデンス、推奨度とも満点である(これ以上はないという意味)。しかし実際の治療になると、これらのランクに拘らず、柔軟に対処するのが良いと考えている。リリカもそうだが、副作用で使えない人も珍しくない上、思わぬ薬が奏功することもあるからである。(リリカ、サインバルタ、トレドミンはエビデンスⅠ、推奨度A。薬物でエビデンスレベルⅠはこれら4剤のみ。なお海外ではトレドミンのエビデンスはⅠだが、日本ではⅡaである。)
少なくとも、僕が診るようになった患者さんは疼痛が消失するかほとんど感じないまでになりADLも改善している。例えば、疼痛のためにいつも車椅子で受診していたが、今は歩行し普通車を運転している女性もいる。
彼女はリリカやリボトリールなどの抗てんかん薬、トラムセットを使っており、大変な多剤併用療法である。「線維筋痛症は頑張ればなんとかなる疾患」と言う僕の脳内の位置づけである。
また、驚愕することに、リウマチ線維筋痛症様の疼痛、うつ状態を治療中にリウマチが治癒する事件も起こった。
これについて恩師に尋ねたところ(リウマチの専門医)、リウマチの全体の20%は薬も何も使わなくても完治するんだそうである。この言い方だが、なんとなく統合失調症の疾患経過に似ている。(過去ログにある)
日本では線維筋痛症を「効能・効果」に挙げている薬物はない。ごく最近、「リリカに線維筋痛症が効能効果として明記されるようになるかもしれない」ことを共同通信かどこかが配信していた。
今はまだリリカを線維筋痛症の治療に使用することは、日本では承認されていない。
ところで、線維筋痛症は少なくともこの病名としては精神科の診断基準には登録されていない疾患である。ICD10では、入れるとすれば、
F40-F48 神経症性障害、ストレス関連障害及び身体表現性障害
の中と思われる。F45に「身体表現性障害」が挙げてあり、この中のF45.4、
F45.4 持続性身体表現性疼痛性障害
くらいであろう。この疾患は、もしそれが前景であれば、自立支援法ではここに入れるしかないと思う。
線維筋痛症は一般の膠原病と同じく女性に多い疾患である。日本ではその男女比は1:5程度である。海外ではもう少し男女比が大きく、つまり女性の患者さんの比率がより高い。
アメリカでは、全人口の2%ほどの患者さんがおり、他の国でも疫学的に同じような数値が出ている。日本では、線維筋痛症は200万人ほどいると推計されており、これは全人口の1.7%に相当する。
実は関節リウマチは日本では0.5%程度の有病率なので、線維筋痛症の方が有病率がずっと高い。つまり、線維筋痛症は関節リウマチよりずっとありふれているが、あまり診断されていない疾患と言える。
アメリカでは1名の患者さんに対し、年間27万円ほどの医療費が使われているらしい。アメリカの人口は現在3億人を超えており、大変な額の医療費と言える。
線維筋痛症の患者さんはその疾患による疼痛やうつ状態などの精神症状のためADLが低下し、ほとんどの人が職を失う。僕の初診時の患者さんは働いていないか、主婦をなんとかやっている人がほとんどである。
線維筋痛症は、平均的には40歳代前半で発病し、患者全体の平均年齢は50歳を少し超える程度。なんと、小児にも線維筋痛症の患者さんがおり、時に不登校の原因になっている。線維筋痛症全体の中で小児の占める割合は4.8%くらいらしい。
(なんとなく中途半端だが、今日はこれで終わり)
参考
精神科では先に見えたものから診断される
リウマチの人は統合失調症になりにくいという謎
リリカ
サインバルタ
今回はテーマの記事数をいつまでもゼロにしておくのはちょっと・・と思ったのもあり、総論的なことについてアップしたい。
元々、この疾患は近年新しく言われ始めた疾患概念であり、独立してこれが存在しているのか、あるいはもっと大きな疾患が別にあり、その表現型として優位に立つものをそう呼ぶのか微妙である。
精神科では統合失調症以外では、時々そんな風な疾患群があるので、またいつものことか・・と言う印象もなくはない。
精神科医は線維筋痛症や慢性疲労症候群は、命名されるずっと以前から抗うつ剤や抗てんかん薬、あるいは漢方などで治療してきたのである。だから精神科医から、「そういう疾患名はなくても良い」と言われたとしても、僕はその意見も十分納得できる。
線維筋痛症に限らず、慢性疲労症候群、疼痛性障害は身体や精神疾患の重複が多く、どのような基準で主病名にするのかが曖昧になっている。
線維筋痛症はリウマチ関連疾患であり整形外科で扱われることが多い。従って、整形外科が主体に診ている患者さんが多いように思われるが、リウマチではない人が精神科やあるいは麻酔科のペインクリニックなどで治療されるケースもある。
線維筋痛症はよく合併する疾患が疫学的に調査されている。
線維筋痛症の合併病態(日本)
関節リウマチ 33.5%
他のリウマチ性疾患 44.1%
非リウマチ性疾患 20.4%
他のリウマチ性疾患44.1%の内訳
シェーグレン症候群 24.7%
SLE 6.4%
強皮症 2.2%
ベーチェット病 2.2%
血清反応陰性脊椎症 2.2%
混合性結合組織病 2.2%
その他 3.2%
非リウマチ性疾患20.4%の内訳
間質性膀胱炎 5.4%
変形性関節症など 15%
僕の場合、既に整形外科で線維筋痛症として告知されている人が、疼痛や特にうつ状態で初診した際に治療する機会が多い。線維筋痛症と患者さんが言う場合、必ずどのような診察を受け、どのような結果から告知をされたか尋ねるようにしている。(近年、診断基準の変更があった)
線維筋痛症は結局は症状が軽くなり、日常生活の制限が少なくなるかほぼなくなれば良いので、どこで治療されるかは大きな問題ではない。しかし、他科では処方したことがないか、極めて使い辛いが、エビデンスレベルの高い向精神薬もあるので、精神科の治療水準はけっこう高いのではないかと思っている。
元々、線維筋痛症に推奨されている薬物は向精神薬が多く、エビデンスレベルも推奨度も高いものが多い。
例えばトリプタノールはエビデンスⅠ、推奨度Aである(海外)。エビデンス、推奨度とも満点である(これ以上はないという意味)。しかし実際の治療になると、これらのランクに拘らず、柔軟に対処するのが良いと考えている。リリカもそうだが、副作用で使えない人も珍しくない上、思わぬ薬が奏功することもあるからである。(リリカ、サインバルタ、トレドミンはエビデンスⅠ、推奨度A。薬物でエビデンスレベルⅠはこれら4剤のみ。なお海外ではトレドミンのエビデンスはⅠだが、日本ではⅡaである。)
少なくとも、僕が診るようになった患者さんは疼痛が消失するかほとんど感じないまでになりADLも改善している。例えば、疼痛のためにいつも車椅子で受診していたが、今は歩行し普通車を運転している女性もいる。
彼女はリリカやリボトリールなどの抗てんかん薬、トラムセットを使っており、大変な多剤併用療法である。「線維筋痛症は頑張ればなんとかなる疾患」と言う僕の脳内の位置づけである。
また、驚愕することに、リウマチ線維筋痛症様の疼痛、うつ状態を治療中にリウマチが治癒する事件も起こった。
これについて恩師に尋ねたところ(リウマチの専門医)、リウマチの全体の20%は薬も何も使わなくても完治するんだそうである。この言い方だが、なんとなく統合失調症の疾患経過に似ている。(過去ログにある)
日本では線維筋痛症を「効能・効果」に挙げている薬物はない。ごく最近、「リリカに線維筋痛症が効能効果として明記されるようになるかもしれない」ことを共同通信かどこかが配信していた。
今はまだリリカを線維筋痛症の治療に使用することは、日本では承認されていない。
ところで、線維筋痛症は少なくともこの病名としては精神科の診断基準には登録されていない疾患である。ICD10では、入れるとすれば、
F40-F48 神経症性障害、ストレス関連障害及び身体表現性障害
の中と思われる。F45に「身体表現性障害」が挙げてあり、この中のF45.4、
F45.4 持続性身体表現性疼痛性障害
くらいであろう。この疾患は、もしそれが前景であれば、自立支援法ではここに入れるしかないと思う。
線維筋痛症は一般の膠原病と同じく女性に多い疾患である。日本ではその男女比は1:5程度である。海外ではもう少し男女比が大きく、つまり女性の患者さんの比率がより高い。
アメリカでは、全人口の2%ほどの患者さんがおり、他の国でも疫学的に同じような数値が出ている。日本では、線維筋痛症は200万人ほどいると推計されており、これは全人口の1.7%に相当する。
実は関節リウマチは日本では0.5%程度の有病率なので、線維筋痛症の方が有病率がずっと高い。つまり、線維筋痛症は関節リウマチよりずっとありふれているが、あまり診断されていない疾患と言える。
アメリカでは1名の患者さんに対し、年間27万円ほどの医療費が使われているらしい。アメリカの人口は現在3億人を超えており、大変な額の医療費と言える。
線維筋痛症の患者さんはその疾患による疼痛やうつ状態などの精神症状のためADLが低下し、ほとんどの人が職を失う。僕の初診時の患者さんは働いていないか、主婦をなんとかやっている人がほとんどである。
線維筋痛症は、平均的には40歳代前半で発病し、患者全体の平均年齢は50歳を少し超える程度。なんと、小児にも線維筋痛症の患者さんがおり、時に不登校の原因になっている。線維筋痛症全体の中で小児の占める割合は4.8%くらいらしい。
(なんとなく中途半端だが、今日はこれで終わり)
参考
精神科では先に見えたものから診断される
リウマチの人は統合失調症になりにくいという謎
リリカ
サインバルタ