「いったん混沌とさせる減量の方法」のその後 | kyupinの日記 気が向けば更新

「いったん混沌とさせる減量の方法」のその後

今日のエントリは、「いったん混沌とさせる減量の方法」の続きである。以下はこの過去ログの最後の部分から。

クレミン   50mg
プロピタン  150mg
リボトリール  1mg
アキネトン   2mg
セパゾン    4mg
テトラミド   30mg
ロヒプノール  4mg
レボトミン   25mg
ユベラN    400mg
カタプレス   75μg
他下剤。
(リスパダール換算 2.5mg) 

どうもこの患者さんは、ジプレキサ5mgだけ服用しておけば良いような気もするのよね。ちょうど今の処方はジプレキサ6.25mgに当たる。しかし、ここまで来てジプレキサに変更はあまりにもリスキーである。ほぼうまくいきそうにない薬はエビリファイやルーラン。最近発売のロナセンはあるいは良いかもしれない。あまり冒険せずにリスクをとらずにやってきたのはやはり外来患者さんだからだ。


その後、順調に減量はしていたが、どうしても離脱によるジスキネジアと振戦がうまくコントロールできなかった。減量するとジスキネジア、振戦がかえって目立つようになるのである。これは、このような長期の大量処方や女性ということも関係している。その後カタプレスは150μgまで増量。

8ヶ月目
昼間に眠いという。幻聴はないというが、「自分は鬼だ。人間じゃない」と思ったりするというので、一時、プロピタンを減量しロナセンを追加することも考慮していた。振戦は全般は以前よりは少なくなっており、ギクシャクした感じではない。

9ヶ月目頃
プロピタンを100㎎に減量したところ、振戦、ジスキネジアが増加したのでこれ以上の減量は容易ではないと感じた。プロピタンは200mgまで増量。緩衝材として一時的にツムラ54を併用しクレミンをジプレキサに変更することにした(ツムラ54は本人が飲み辛いというのですぐに中止)。ジスキネジアでまだマシと思えるのは、口唇の振戦様の動きであり、舌の捻るような動きではないこと。舌も微かに震えているが見た目に見苦しくはないのが救いであった。ちょっと考えたが、

ロナセンは・・やめておいた。

なぜジプレキサなのかというと、思い切って使うならジプレキサが一番良い。この人は痩せ型だし。また、ジスキネジアなどが残遺していること、不安感や陽性症状の破片みたいなものが残遺していること、アキネトン、テトラミドが併用されていることなどがある。これらを一気に整理するには、ジプレキサをおいて他に選択肢はないと言えた。リスクはあるが、ジプレキサなのである。

ジプレキサ   5㎎↑
プロピタン   200mg
リボトリール  1mg
アキネトン   1mg↓
セパゾン    4mg
テトラミド   30mg
ロヒプノール  4mg
レボトミン   25mg
ユベラN    400mg
カタプレス   150μg
他下剤。
(リスパダール換算 3.25mg)


9ヶ月半ば
ジプレキサは彼女にはフィットしていると感じた。振戦が減少しよく眠れるようになったという。幻聴などないと言うため。ジプレキサを増量し、プロピタンを漸減。レボトミンは中止している。

ジプレキサ   7.5㎎↑
プロピタン   100mg
リボトリール  1mg
アキネトン   1mg
セパゾン    4mg
テトラミド   30mg
ロヒプノール  4mg
ユベラN    400mg
カタプレス   150μg
他下剤。
(リスパダール換算3.5mg)


いつも駐車場の草取りをしているという。朝早く起きてしている。人から見られている気分はなくなりました。うつはありませんという。体重は42.5kgで変わっていない。ジプレキサを10㎎とし、プロピタンを50㎎とする。

ジプレキサ   10㎎↑
プロピタン   50mg
リボトリール  1mg
アキネトン   1mg↓
セパゾン    4mg
テトラミド   30mg
ロヒプノール  4mg
ユベラN    400mg
カタプレス   150μg
他下剤。
(リスパダール換算 4.25mg)


10ヶ月
体の不随意運動は減少している。「人から何か言われている感じがなくなりました」という。体がずいぶん楽になっている。時々イライラがあるという。セパゾン減量、アキネトン、プロピタン、テトラミド中止。ジプレキサは非常に良いが量が適切かどうかは微妙である。

ジプレキサ   10㎎
リボトリール  1mg
セパゾン    2mg
ロヒプノール  4mg
ユベラN    400mg
カタプレス   150μg
他下剤。
(リスパダール換算 4mg)


現在、口唇周囲の振戦がほぼ消失している。不安感はないという。体重は41kgとやや減少しているが、なぜか顔はふっくらしてきたように見える。健康そうになってきた。この人にはジプレキサ10㎎は多いと感じた。7.5㎎に減量。便秘が減少している。カタプレス、セパゾン減量。

現在
ジプレキサ   7.5㎎
リボトリール  1mg
ロヒプノール  4mg
ユベラN    400mg
カタプレス   75μg
他下剤。
(リスパダール換算 3mg)


今はゆったりと落ち着いた印象である。上の処方では、リボトリール、ユベラN、カタプレスは振戦、ジスキネジアを緩和するために処方している。僕は典型的な統合失調症の人には昼間にベンゾジアゼピンは必要ないという考え方だ。不眠がある人はやむなく眠剤として処方している。ただベンゾジアゼピンでもリボトリールだけは例外で、これはジョーカーなのである。

転院時の処方は、
インプロメン  18mg
クレミン    100mg
ドグマチール  800mg
アキネトン   4mg
セパゾン    4mg
テトラミド   60mg
ロヒプノール   4mg
レボトミン   25mg
他下剤。
(リスパダール換算 16.25mg)


だったので、大変な変化である。まだ転院後1年は経過していないが、破綻もなく薬物の整理はほぼ終わりに近い。前回のエントリで、「どうもこの患者さんは、ジプレキサ5mgだけ服用しておけば良いような気もするのよね」と書いているが、その見込みはほぼ当たっていたような気がする。

この人は減量にあたり、ジプレキサが合っていたというのが非常に大きい。というのは、これは個人差であり、万人に対しこういう変更ができるわけではないから。この患者さんでは、ジプレキサに変更後、わずかに体重が減少している。ジプレキサは最も体重が増加する抗精神病薬の1つであるが、本当に合っている人では減少することもよく診る。爆発的に増える人はやはりどこかしら合っていないんだと思う。

やはり、旧来の抗精神病薬は年齢が上がるとなかなか難しい。というのは、相対的に薬が重くなる上に、ジスキネジアの発生のために減量が思うようにできない人がいるからである。