ウェールズタイプの統合失調症の寛解
僕がお手伝いに行っている病院に、全く服薬していないが、時々通院だけはしている患者さんがいる。彼はもうかなり年配だが、若い頃から長く精神病院に入院していたという。今回の話は、「精神科医への不信感や敵意」の部分的な続きにもなっている。
彼は半年に1回しか通院しないので、僕が会ったこともまだ数回しかない。診察の度に近況を聞き、次の受診日を決めている。
彼は大学生時代に発病。当時、親と兄弟に精神科病院に連れて行かれ強制的に入院になったというが、どの程度の症状だったかははっきりしない。まあ、家族に同伴されて精神科病院に行っているのでそれなりに病状が重かったことは確かであろう。彼によれば、その後ずっと退院できなかったという。一応、他県の国立病院に入院していたというので、少なくとも非常に悪い精神科病院に無為に入院させられていたわけでもなかったと思う。
現在、彼は薬を中止後4年くらい経つので、今後再発する確率はほぼないと言ってよいほどだと思う。もう4年も経つわけだし、再発するなら、既にそうなっているはずだ。僕が診始めた時は既に薬を中止していたので、服薬中止は僕の判断ではない。僕はその後の経過を診ているだけである。
彼との診察では最初近況を聴くが、その後よく入院時の話が出てくる。特に看護人(男性の看護人)に対しての恨みが多い。しかし今となってはそこまで酷い言い方をしておらず、もう思い出というか昔話風な感じだ。医師に対しての恨みは言わないが、薬がきつかったという話はするので、僕に対して遠慮もあるのかもしれない。
僕はただ話を聞いているだけで、時々その当時の医療や医師の判断、看護人の対応について意見を言うくらいである。だって、今さらどうこう言ったところでどうしようもないというのもある。
さて、彼の診断だが、非定型精神病の色彩が濃い統合失調症なんだと思う。彼には一見、欠陥症状がなく、あの年齢だと一般人よりかえって健康なくらいで、一般の人は彼をおそらく精神病とは思わないであろう。(プレコックス感のテーマを参照)
少なくとも、薬も服用していないわけで、究極の寛解状態と言って間違いないし、あれを統合失調症の治癒状態と言うなら、そういっても良いくらいだと思う。このような経過になった理由はやはり病型が大きい。
彼の性格を本人に聞いてみた。彼は自分を「皮肉屋。悪いことははっきり悪いという。口が悪い」と言うんだな。おそらく、彼はウェールズ生まれタイプの性格なんだと思う。(参考)
このような人たちは、非定型精神病状態を呈する事があるし、極期の病状から統合失調症の診断を受けやすい。しかし本当に統合失調症かどうかは他の判断基準による。結局、どんな診断であれ、予後良好のタイプには変わりはない。
彼らは治療を続けていると、この人のように全然欠陥症状がないほどの寛解状態を呈し、薬なしでやっていける人も存在する。これは過去ログでもデパスやレキソタンだけで良い人などを紹介しているので興味のある人は参照してほしい。(参考)どのくらいの期間の治療が必要かは、治療の仕方や個人差があると思う。ただ、以前より統合失調症に対しての治療が進歩しているし気分安定化薬も併用されるようになったので、治療期間は短縮しているはずだ。
彼の場合、薬なしで経過が良いが、同じように寛解していても抗精神病薬が必要な人たちがやはりいる。しかし大量に必要な人が滅多にいない。例えば、過去ログで、クリスチャンの女性(参考1、参考2、参考3)の場合はプロピタン100mgしか服用していないが、服薬を中断すれば100%に近い確率で再発すると思う。その理由は彼女を現在8年間診て来てそんな風に思うからだ。ルーラン2mgの人も同様である。止めてもやっていけなくはないが、生活の質が悪すぎて無理に中止する価値がない。(参考)。
服薬中断前の彼の処方だが、最後の頃はPZC4mgだったという。それ以前はPZC8mgだった。過去の入院中はプロピタンを12錠服薬していたこともあったらしい。彼はプロピタン600mg時代は非常にきつかったと話していた。
確かにプロピタンは鎮静的な薬物なので、600mgはリスパダール換算で3mgでしかないが、きつい量だと思われる。これは彼が典型的な統合失調症ではなかったことももちろん関係している。しかしこの時の薬がプロピタンであったことが、予後に対してはおそらくプラスであっただろうと思われる。(参考)
彼がプロピタンを処方されていたことで、当時の精神症状がどんな風だったか僕には想像できるような感じなのである。プロピタンは過去ログにもいくつか出てくるが、SDA的な薬物で、現在の非定型精神病薬のルーツ的なものである。しかし抗ドパミン作用は弱いので、幻覚妄想が強いような人には感覚的には向かない。それに最高量でもリスパダール3mgにしか相当しない薬物である。
僕はクリスチャンの彼女もプロピタン100mgというのが、ちょっと面白いと思った。
彼のように服薬ゼロで寛解状態に至ってしまうと、あの時の服薬は必要なものだったのだろうか?とか、不適切な医療を受けていたのではないかと疑いを抱いても不思議ではない。やはり、インターネットで、強く精神医療に対し不信感を訴える人たちの一部に、このような経験を持つ人が現実にいるのだと思う。
非定型精神病やそれに関係の深いタイプの統合失調症の人たちは、おそらく脳の慢性炎症性のものであり、うまく治療がされるとか、あるいは偶然のきっかけでその炎症が消失し、非常に良好な寛解状態に至りうるのである。または不完全寛解で少し症状が残遺するが、レキソタンだけとかデパスだけで症状が固定し、それ以上何も起こらなくなる人がいるのである。
僕は精神医療への強い不信感や敵意をアピールする人々にはいくつかタイプがあり、その1つがウェールズタイプの人々なんだと思う。なぜなら、彼ら(彼女ら)は気性が激しく攻撃的だし、口が悪い人たちも多いからである。治癒になった経緯も、ろくに精神医療を受けなかったとか、薬を中止していて我慢していたら、だんだん良くなってきてほとんど治ってしまったと言う人もいるくらいである。偶然、サプリメントだけで良くなった人も存在する。
それは精神医療がまずい対応をしたわけではなく、病気の悪化、寛解(治癒)の流れ、バイオリズムがそうなっているのである。(ネットで攻撃する人々には他のタイプもいるが、長くなるので省略)
彼が1つだけ面白い話をしていた。
服薬を中止してずいぶん経った頃、ある時期、風邪を引いて全然治らなかったという。38℃以上の熱が続き、倦怠感もとてつもなく酷いので、PZCが残っていたので1錠だけ飲んだ。すると、一発で治ったという。
素晴らしすぎる・・と僕は思った。
これは、非定型精神病状態が脳も身体もないのを良く表わしているエピソードで、その点で興味深い。彼はもはや、脳には炎症が及ばないのであろう。(脳は関係しているのであろうが、表現型ではそうではないという意味)僕には彼はウェールズタイプの本質を表わしているように見える。(参考)。
この話は2人で大笑いであった。僕は彼に上の話はしなかった。だって意味ないし。
参考
精神科医への不信感や敵意
ウェールズ生まれの
デパス0.5mgの謎
発病後40年
ポール・ヤンセンとプロピタン
非定型病像と褥瘡
精神疾患と服薬
彼は半年に1回しか通院しないので、僕が会ったこともまだ数回しかない。診察の度に近況を聞き、次の受診日を決めている。
彼は大学生時代に発病。当時、親と兄弟に精神科病院に連れて行かれ強制的に入院になったというが、どの程度の症状だったかははっきりしない。まあ、家族に同伴されて精神科病院に行っているのでそれなりに病状が重かったことは確かであろう。彼によれば、その後ずっと退院できなかったという。一応、他県の国立病院に入院していたというので、少なくとも非常に悪い精神科病院に無為に入院させられていたわけでもなかったと思う。
現在、彼は薬を中止後4年くらい経つので、今後再発する確率はほぼないと言ってよいほどだと思う。もう4年も経つわけだし、再発するなら、既にそうなっているはずだ。僕が診始めた時は既に薬を中止していたので、服薬中止は僕の判断ではない。僕はその後の経過を診ているだけである。
彼との診察では最初近況を聴くが、その後よく入院時の話が出てくる。特に看護人(男性の看護人)に対しての恨みが多い。しかし今となってはそこまで酷い言い方をしておらず、もう思い出というか昔話風な感じだ。医師に対しての恨みは言わないが、薬がきつかったという話はするので、僕に対して遠慮もあるのかもしれない。
僕はただ話を聞いているだけで、時々その当時の医療や医師の判断、看護人の対応について意見を言うくらいである。だって、今さらどうこう言ったところでどうしようもないというのもある。
さて、彼の診断だが、非定型精神病の色彩が濃い統合失調症なんだと思う。彼には一見、欠陥症状がなく、あの年齢だと一般人よりかえって健康なくらいで、一般の人は彼をおそらく精神病とは思わないであろう。(プレコックス感のテーマを参照)
少なくとも、薬も服用していないわけで、究極の寛解状態と言って間違いないし、あれを統合失調症の治癒状態と言うなら、そういっても良いくらいだと思う。このような経過になった理由はやはり病型が大きい。
彼の性格を本人に聞いてみた。彼は自分を「皮肉屋。悪いことははっきり悪いという。口が悪い」と言うんだな。おそらく、彼はウェールズ生まれタイプの性格なんだと思う。(参考)
このような人たちは、非定型精神病状態を呈する事があるし、極期の病状から統合失調症の診断を受けやすい。しかし本当に統合失調症かどうかは他の判断基準による。結局、どんな診断であれ、予後良好のタイプには変わりはない。
彼らは治療を続けていると、この人のように全然欠陥症状がないほどの寛解状態を呈し、薬なしでやっていける人も存在する。これは過去ログでもデパスやレキソタンだけで良い人などを紹介しているので興味のある人は参照してほしい。(参考)どのくらいの期間の治療が必要かは、治療の仕方や個人差があると思う。ただ、以前より統合失調症に対しての治療が進歩しているし気分安定化薬も併用されるようになったので、治療期間は短縮しているはずだ。
彼の場合、薬なしで経過が良いが、同じように寛解していても抗精神病薬が必要な人たちがやはりいる。しかし大量に必要な人が滅多にいない。例えば、過去ログで、クリスチャンの女性(参考1、参考2、参考3)の場合はプロピタン100mgしか服用していないが、服薬を中断すれば100%に近い確率で再発すると思う。その理由は彼女を現在8年間診て来てそんな風に思うからだ。ルーラン2mgの人も同様である。止めてもやっていけなくはないが、生活の質が悪すぎて無理に中止する価値がない。(参考)。
服薬中断前の彼の処方だが、最後の頃はPZC4mgだったという。それ以前はPZC8mgだった。過去の入院中はプロピタンを12錠服薬していたこともあったらしい。彼はプロピタン600mg時代は非常にきつかったと話していた。
確かにプロピタンは鎮静的な薬物なので、600mgはリスパダール換算で3mgでしかないが、きつい量だと思われる。これは彼が典型的な統合失調症ではなかったことももちろん関係している。しかしこの時の薬がプロピタンであったことが、予後に対してはおそらくプラスであっただろうと思われる。(参考)
彼がプロピタンを処方されていたことで、当時の精神症状がどんな風だったか僕には想像できるような感じなのである。プロピタンは過去ログにもいくつか出てくるが、SDA的な薬物で、現在の非定型精神病薬のルーツ的なものである。しかし抗ドパミン作用は弱いので、幻覚妄想が強いような人には感覚的には向かない。それに最高量でもリスパダール3mgにしか相当しない薬物である。
僕はクリスチャンの彼女もプロピタン100mgというのが、ちょっと面白いと思った。
彼のように服薬ゼロで寛解状態に至ってしまうと、あの時の服薬は必要なものだったのだろうか?とか、不適切な医療を受けていたのではないかと疑いを抱いても不思議ではない。やはり、インターネットで、強く精神医療に対し不信感を訴える人たちの一部に、このような経験を持つ人が現実にいるのだと思う。
非定型精神病やそれに関係の深いタイプの統合失調症の人たちは、おそらく脳の慢性炎症性のものであり、うまく治療がされるとか、あるいは偶然のきっかけでその炎症が消失し、非常に良好な寛解状態に至りうるのである。または不完全寛解で少し症状が残遺するが、レキソタンだけとかデパスだけで症状が固定し、それ以上何も起こらなくなる人がいるのである。
僕は精神医療への強い不信感や敵意をアピールする人々にはいくつかタイプがあり、その1つがウェールズタイプの人々なんだと思う。なぜなら、彼ら(彼女ら)は気性が激しく攻撃的だし、口が悪い人たちも多いからである。治癒になった経緯も、ろくに精神医療を受けなかったとか、薬を中止していて我慢していたら、だんだん良くなってきてほとんど治ってしまったと言う人もいるくらいである。偶然、サプリメントだけで良くなった人も存在する。
それは精神医療がまずい対応をしたわけではなく、病気の悪化、寛解(治癒)の流れ、バイオリズムがそうなっているのである。(ネットで攻撃する人々には他のタイプもいるが、長くなるので省略)
彼が1つだけ面白い話をしていた。
服薬を中止してずいぶん経った頃、ある時期、風邪を引いて全然治らなかったという。38℃以上の熱が続き、倦怠感もとてつもなく酷いので、PZCが残っていたので1錠だけ飲んだ。すると、一発で治ったという。
素晴らしすぎる・・と僕は思った。
これは、非定型精神病状態が脳も身体もないのを良く表わしているエピソードで、その点で興味深い。彼はもはや、脳には炎症が及ばないのであろう。(脳は関係しているのであろうが、表現型ではそうではないという意味)僕には彼はウェールズタイプの本質を表わしているように見える。(参考)。
この話は2人で大笑いであった。僕は彼に上の話はしなかった。だって意味ないし。
参考
精神科医への不信感や敵意
ウェールズ生まれの
デパス0.5mgの謎
発病後40年
ポール・ヤンセンとプロピタン
非定型病像と褥瘡
精神疾患と服薬