いっまでのあらすじ~母は新興宗教にかぶれてしまって
私の話を聞かなかった~


今までの話で、父の姿が出てこないことに気付かれた方が
おられるかもしれない。

父は家にはいなかった。
私と母は、母方の祖父母の家に同居していたのである。
小学校2年~6年まで父は単身赴任しており、
月に1,2度くらい会いに来るのだった。

父は母が自称・霊能者に通っていることは知っていたが、
自分から霊能者の本拠地に赴くことはなく、黙認状態であった。

私はそこに希望を抱いていた。

母がお話にならないなら、父親は話せるのではないかと。



めったに会わないから正確な判断材料が
足りないだけだったと、のちに判明するのだが…。



母に本音を話そうとするとすぐヒステリックになり、
シヌだなんだの話になってうんざりしていた私は、
中学~高校生と親子三人暮らしになってから、父には
「ほんとは医者になりたいわけではない」
「母親がしがみついてきてイヤだ」
など真剣な話をしようと努力してきた。


しかし、父はどれも生返事でやり過ごすのであった。
昔の父親に多い、「仕事してりゃ充分だろう、
 家庭のいざこざなんか知るか」というタイプの男だったのだろう。


父にも幻滅する事件があったのは、私が23歳のときである。


私は、当時の彼氏(現・ダンナ)とデートしたいと思った。

しかし、前述したように一日2~3回も自宅に電話をよこすような
干渉のきつい親である。

だから私は一計を案じ、朝は家電を受けるが、夜はこちらから
実家に電話をかけ、「もう寝るから電話してこないでね」
とことわれば、なんとか親バレせずに済むと思ったのである。


彼の家に外泊を断行したのだが、私の読みが甘かった。

両親が、彼の家に電話をしてきたのである。

しかも(彼が友人、もしくはそれ以上であることは両親も知っていた)、

私の両親が彼の実家に電話→

  下宿先を聞きだし→

    彼のアパートに電話。


私は両親が嫌いで恐ろしかったので、電話が来たことを彼から
知らされると、カラダがおこりのようにぶるぶると震えだしてしまった。

今まで両親がどういう人物かはだいたい彼に話してあったのだが、
あまりの私の混乱ぶりに同情した彼が、私の下宿まで付き添って
くれることになった。



私が急いで朝下宿に戻ると、部屋には黙りこくる父母の姿が。

帰ってきた私に、母は

「勉強だけしているイイ子だと思っていたのに!」

と叫ぶと、付き添ってくれた彼氏の首を絞めだした。

錯乱した女の力ゆえ、大事には至らなかったのだが、
彼の首に母の長く伸ばした爪が食い込み、流血した。



すると父が、にくにくしげな表情で一言叫んだ。


生涯私が忘れないであろうひとことを。




○●山からJが裏切るって

言われてたんだぞ!!」





○●山とは、あの自称・霊能者の住む本山の名である。



父もか!!

あの自称・霊能者の預言を信じるというのか!

今時、十代でも男と朝帰りなんてことは(いいことではないが)ざらにある。

それを、とっくに成人した娘をつかまえて、娘の話は聞かずに
いきなりコレだ。


確かにウソをついて外泊したのは悪かっただろう、
しかし互いに独身の成人で、結婚前提に真面目な交際を
しているのに、親から出た言葉は

霊能者の預言が当たった

などというバカげた台詞だった。


絶望。

○●山だと。

そうか、おまえも信者だったのか。


これで、私は父をも失ったのだった。

遠からず、私は両親を切り捨ると予感したのがこの時だった…。




次回、親のストーカー編@研修医時代につづきます…。