第二十一章 秘密結社
舞台裏で政治を操る男たち
手も足も使わず、強く鋭い歯を用いて、
群衆を抜けて堅固な港と年長者に向かう。
門に近く、二心ある男は横切る。
月光は乏しく、大いなる略奪。
(第二巻五十八番)
ノストラダムス…これは反キリストの時代に起きる。
「月光は乏しく」とは、この状況に関係する人々が自らの心霊的・直感的自我を認識していない事実を指す。
つまり彼らの生涯において月光がきわめて乏しいのだ。
月は心霊的事象をつかさどる天体をあらわしているのだ。「門に近く、二心ある男は横切る」は、この集団が軍事的陰謀団にやや似ているが、そのものではないことをあらわす。
秘密の人形つかいの一団が存在し、舞台上の人形の糸を引いたり、必要に応じて道具立てを変えたりしている。
舞台上の人形とは、世界の主要な都市にいる政治的大物だ。背景は都市を移るごとに変化するが、状況設定はつねに変わらない。
この舞台裏の人形つかいたちはまとまって一つの組織を作り、彼ら自身の目的のために働いている。
だが、彼らはきわめて巧妙に偽装している。
たとえば顧問や次官など一見比較的地味ながら、権力にとって重要な地位に就いているのだ。
奉職先である都市にいるときの彼らは、政府と同じ目標に向かって働く善良で忠実な模範的市民のように思える。
だが、外の世界への門を横切るや否や、政府への忠誠などどこへやら、組織の目的達成のために収集しておいた情報を利用するのだ。
「手も足も使わず、強-鋭い歯を用いて」も、この人々をさらに詳しく述べたものだ。
彼らには政治的操縦をおこなう力へつまり民衆を小突きまわす手や足はないけれども'何にでも食い込ませられる強くて鋭い歯がある。
何でもがっちりと握れるのだ。
彼らこそ現実世界を動かしている支配者なのだ。
この組織は何世代も前から存続してきた。
その存在について暗示するならば、世界の銀行業の実力者と金融業の実力者一族の歴史をたどることだO彼らは徹底した秘密主義だから、当の一族たち以外にそのことを知っているものはいない。
この支配者たちの秘密結社は、支配権は欲するが舞台裏に留まりたいがために、きわめてゆっくりと、だが着実に世界的権力組織を作り上げてきたのだ。
初めて反キリストが登場してくるとき、彼らはこの人物をたんなる若くてエネルギッシュな中東出身の新しい指導者にすぎないと思い'中東を支
配下におさめる手だてにこの男を利用しょうと考える。
しかし反キリストは最後には彼らに逆襲を食わすことになるのだ(四行詩第二巻十八番にこの件が述べられている。
反キリストは自分を支援してくれているとは知らずに、彼らを殺害するのである)0
これは、一九八七年一月から三月にかけて発生した'ニカラグアの反政府右派ゲリラ・コソトラへの武器輸出事件を指していると考えて間違いないだろう。
アメリカ政府の関与が取り沙汰されたが、コントラ側は資金援助はおもにいまだ正体の判明していない私的グループによってなされた と主張したのだった。
同時にこの間、武器売買のための数百万ドルという巨額の金が消えうせた、と言われた。
この資金の出所をたどってい-と'世界じゅうのさまざまな銀行の預金口座に預金されていたところまでは判明したがへそこで消滅し
てしまったというのだ。
調査のかいなく関与した人物あるいはグループに関する何の手がかりも発見できなかったのである。
このことは'世界情勢を支配し、自らの目的のためには武器供与までおこなって戦争を続行させる秘密結社が存在するというノストラダムスの主張の、裏づけと考えられないだろうか。
秘密結社と反キリストとの対決大惨事を招-行為が完結Lt 第七の名前は第五と同じになるだろう。
第三(の名前)からより大いなる外国の主戦論者。
パリとエーは牡羊座に留まらせられる。
(第二巻八十八番)
ノストラダムス-これは反キリス-の時代を述べた詩だ。
「大惨事を招-行為」とは'反キリストがラPッパの占拠にはぼ成功することを指す.
ここにうたった名前は'彼のいわゆる〝内閣〟にっいての手がかりだtと人々は表面的に見て解釈するだろうね。
だが実際はも何をいつ、どこで起こすかを舞台裏で決定している国際的資本家や銀行家たち-あの人形つかいに関するもっと内密の手がかりなのだ。
わたし-例の秘密結社ですか?
ノストラダムス-そうだO「フランスとエーは牡羊座に留まらせられる」は'彼らは反キリストと実戦を続けるのでな-、事態は反キリストの注意が別の場所に移る状況に落ち着-ことを意味する。
そしてフランスには地下運動の人々が活躍しはじめる。
わたし-ではこの名前は秘密結社の人たちを指しているのですか
ノストラダムス-そのとおり。彼らが知られるよぅになれば'この詩にうたったような方法によって彼らのさまざまな姻戚関係が関連づけられるだろう。
わたし-この結社には数世代にわたる銀行家一族が関係しているのでしたね?
ノストラダムス-そうだ。銀行家をはじめ金鉱、ダイヤモンド鉱山へ皮革、錫などのような生産品関係の一族だ。つまり、ヨーロッパの世界的大企業と共同して、第三世界諸国の原材料の開発によって1族の富の基盤を作った、最下級の植民地男爵たちだ。
むろん植民地時代にまでさかのぼってすべてを突きとめるのは無理だろうが、やがて時が-ればすべての関係者が判明するだろう。
わたし-「第七の名前は第五と同じになる」もみな判明しますか?
ノストラダムス-そのとおり。
「第七と第五が一致する」は、ファース-ネームが同じであるだけではな-、姓においても、第七が第五の一族の一員であると考えられるふうに関連している'という意味だ。
情報が明るみに出れば、いずれ明白になる。
わたし-この秘密組織についての四行詩は数篇訳しましたね。
ノストラダムス-だがへまだ充分とは言えない。
残念ながら、未来のこの点に関しては思ったように探-予見できないのだ。
彼らの迷惑な行為はすでにあらゆる人々に及んでいる。
彼らが気の向くままに経済を動かしたおかげで、失業率が上がったり下がったり'インフレが起きたり沈静化したりしている。
店へ行ってパンを買うたびに、値上がりしているのも彼らのせいだ。
とうの昔から暮らしに影響をこ-むっているのだよ。
これは興味深い考えである。
普通では、景気の動向を左右したり'はたまたおのれの目的のために戦争まで続けさせられるはどの権力を持つ人物いんぜんが見えないところに隠然と存在していようとはも
考えも及ばないものだ。
情報。
不意の豪雨が、出し抜けに二つの軍隊を遮る。
空からの石と火は石の海をなす。
陸と海によって突然七人が死ぬ。
(第二巻十八番)
ノストラダムス-これは反キリストの時代の出来事だ。
再度、地球の変動の影響で極端な天候が生じるのだ。
二つの軍隊が戦闘準備を整えて整列するが、突然天気が激変して雨やあられが激しく降りだす。
虚をつかれた二つの軍隊は予定どおりの接触が不可能となるため'作戦を変更して天候に左右されない高いところに飛行機を飛ばせて'敵対勢力に爆撃を試みようとする。
これが「空からの石と火」だ。
わたし-「七人が死ぬ」は何を意味するのです?
ノストラダムス-ここに支配者の秘密結社が登場するのだ。
彼らは厳密には軍隊ではな-'軍隊の背後で糸を操る権力'すなわち資本家や銀行家のようなものだ。
彼らは反キリストのスパイ行為を通して、発見されて破滅させられる0
それはl面では'敵対する組織を一時的無秩序におとしいれるため'その混乱に乗じることができるという理由でも反キリストに利する。
だが、彼の行動は少々勇み足でもあるのだ。
なぜならこの秘密結社こそが'何十年も何世紀にもわたってその戦争をけしかけつづけてきた黒幕であるからだ。
彼らを破滅させることによって'反キリストは実際に自らの破滅の始まりを書くことになる。
彼の目的を支援してきたこの秘密結社が存在しな-なった今、世界大戦への扇動も当然消滅する。
その結果へ人類本来の世界平和を求める傾向が自然に明らかになりはじめ'それによって
反キリストの排除が始まるからだ。
わたし-彼はそのことに気づかなかったのですか.
ノストラダムス-そうだ。
もし気づいていたら'逆に利用していただろう。
当時の彼にわかっていたのは'彼らがそのヨーロッパの軍隊に資金を出しているために1軍隊は自分と戦いつづけられるのだということだけだったのだ。
四行詩のなかには正体の明らかでない秘密主義の人々があちこちに登場する。
それも、この謎の秘密結社に関係があるのだろうか
第十一章〝しのびよる権力の影〟でとりあげた第五巻七十五番では'アメリカにいる大富豪がうたわれている。
金持ちであることで有名になるが、真実の姿はアメリカ・ナチ党やクー・クラックス・クラソに関係する狂信者であるこの男の唯一の野望は'二十世紀のアメリカの現行政治制度を破壊に追い込むことだという。
ひじょうに用心深-、けっして衆目を集める大権力者にはならず、塊偏を作って'自分は背後に坐りつづけるのだ。
第十九章〝恐るべき実験″で解釈した第十巻七十二番では、恐怖の大王が遺伝子実験との関連で述べられている。
この大王'すなわちこの計画の総合的監督者はかなりの権力者であるため'さまざまな国の政策決定に影響力をもっている。いわば'支配者というよりもほんとうの王様なのだ。
やはり第十九章の第一巻八十一番では、再び謎の権力者集団がうたわれている。
この詩でも遺伝子実験に言及している。
これらはみな、世界情勢を支配する同Tの正体不明の秘密結社を指しているのだろうか?
この人物はひどく秘密主義であるためへ彼のふるう権力に誰も気づかないという。