出逢い(1) | 読書セラピー(幸せのページ)

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木に吹いた風が緑色になるように
花に吹いた風が芳香を運ぶように
風に言葉を託して届けます。

相田みつをさんの詩に


「そのときの出逢いが 人生を根底から変えることがある

よき出逢いを」


というのがあります。


これから、よき出逢いによって

逆境を1つ1つ乗り越えていった男性の物語をお届けます。


・・・・・・・・

(フォーメーション・ラップ)


原さんは生まれつき、常に手のひらに汗をかくという、多汗症。


そのため、同級生に敬遠され、

高校3年の頃には人間嫌いになっていました。


ほとんど不登校で友だちもいない。

唯一好きなクルマを乗り回す日々。

優秀な従兄弟たちと比べ嘆いたお母さんは

ついに息子に勘当を言い渡します。


高校生ながら家を追い出された彼は、4畳半の部屋に住むことに。


自動車整備士になるため、専門学校に通いますが、

バイト先で知り合った彼女に二股かけられ、振られてしまいます。


“不幸続き。こんな自分に何の取り柄があるだろうか”


原さんは自問自答し、クルマの世界で一番を目指します。

それから必死に勉強し、二級整備士の資格をとり、トヨタに入社。


(お前の人生、オートマ車でいいのか?)


職場はトヨタの専門学校を出た人が大半で、

同期の山下さんもその一人。

原さんは早くも差をつけられたと感じます。


新人として雑用をこなす日々を繰り返していたある日。

先輩の一人である、石田さんが話しかけてくれました。


「お前さぁ、クルマは何乗ってんの?」


「あ、はい! スターレットです!」


「じゃあ、サーキットとか走ってんの?」


「い、いえ、特に何も。オートマ車ですし・・・」


「オートマなんておもしろくねぇじゃん。

アクセル踏んでたら、勝手にギヤが変わっちゃうんだぜ。

自分でギヤを選ぶから楽しいんじゃねえかよ。


考えてもみろよ。

クルマに勝手にギヤを決められたらイヤだろ?

なんでもそうだろうが。

自分がすることを、他人とか周囲から決めつけられたらおもしろくねぇだろ。

ちょっと大げさかも知んねーけど」


このとき、体の芯が矢で射られたように震えます。


“いや、石田さんの言うことはちっとも大げさじゃない。

やるせなさは、自分で選ばないときに感じるんだ。”


しばらくして、原さんはスターレットを売り、

AE86レビン(通称「ハチロク」)を購入。


家に帰る道すがら、何度もギヤチェンジを繰り返します。


“これからは自分でギヤを変えてやるんだ。”

思わず、左手に力が入りました。


つづく


出典:『人生で大切なことはすべてプラスドライバーが教えてくれた』(原マサヒコ、経済界、pp.6-25)


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