DIO/DREAM EVIL
1. Night People 2. Dream Evil 3. Sunset Superman 4. All the Fools Sailed Away 5. Naked in the Rain
6. Over Love 7. I Could Have Been a Dreamer 8. Faces in the Window 9. When a Woman Cries
ロニー・ジェイムス・ディオという人はとかく歌が上手い。リッチー・ブラックモアをして『もし自分が歌えたなら
ロニー・ディオのように歌う』とまで言わしめたその強靭な喉はドラマティックなHR・HMを歌う為に生まれて
きたかのように腹の底から唸りをあげる。そこには、デヴィッド・カヴァデールのような色気も、ジョー・リン・タ
ーナーのような親しみやすいポップさもないが、抜群の安定感と暑苦しさまで感じさせる独特の歌唱は、ギ
ターを始めとする楽器が鎬を削りあい、主張しあうHR・HMというジャンルにおいては唯一無二の存在感を
誇る。90年代には一時期あまりにもヘヴィにならなければという使命感から、当時は先鋭的だったグランジ
・オルタナっぽい音に擦り寄り、自身の歌唱もその持ち味を押し殺したようになっていた感のある時期もあっ
たが、それだってロニーの歌唱だけを聴けば曲によってはDIOらしさを垣間見ることが出来た。
このアルバムは1枚目~3枚目をヴィヴィアン・キャンベル(現デフ・レパード)を従えて発表し、当時絶好機
を迎えていたDIOがヴィヴィアンの脱退を経てNEWギタリストのクレイグ・ゴールディを迎えて製作した4枚目
のアルバムだ。
1枚目のアルバム“HolyDiver”と続く2枚目の“The Last In Line”は時代背景も味方して全米では100万枚
以上のセールスを誇っていた。BLACKSABBATH時代からの盟友であるヴィニー・アピスの手数の多い重
量感溢れるドラムに、RAINBOWでも一緒にプレイし、そのコンポーズ能力には定評のあるジミー・ベインを
ベースに据え、ルックスも良くメロディセンス抜群のヴィヴィアン・キャンベルのギターをフューチュアし、そ
こに先述したロニー・ジェイムス・ディオの情念のヴォーカルが乗る。伝えるべき世界観はロニーが
RAINBOW時代から一貫して続けている城やドラゴンや妖精といった現実世界から離れた物語を現実世界
の日常に照らし合わせるかのように綴った妙に皮肉めいたファンタジックな世界観だ。万人受けする音楽性
でもないし、他のロックバンドのように悪っぽさや艶っぽさもない。厭くまでもロニーの信ずるファンタジックな
世界をその強力無比な歌唱で時には激しく、時には哀しくヘヴィメタルの伝統的な様式に則ってメロディが
呼吸する。
“これが好きだ!”と波長が合った人にとっては、ロニー以外には表現することが出来ないこの世界で時に
は激しく感情を刺激し、鼓舞させ、目頭が熱くなるほどの感動を覚えることが出来る(好きな人だけね)
3枚目の“SACRED HEART”は幾分ポップな曲が増えたとはいえ、基本的にはこの路線を継承しており、
ロニー・ディオが作品中一番好きだと語った“Rock 'N' Roll Children”もPMRCの弾圧問題等に積極的にロ
ニーが抵抗したり、チャリティ企画の“STARS”効果もあってか、メタルアンセムとしては当時はかなり浸透し
ていたと思う。ロニーにいやDIOにとっては一番の黄金期だった。
ところが“好事魔多し”看板ギタリストのヴィヴィアン・キャンベルが音楽性の相違を理由に脱退してしまうの
である。(最近のBURRN!誌のインタヴューではヴィニー・ジミー・ヴィヴィアンから見たその裏事情が暴露
されていて笑える。)
その後、後任にクレイグ・ゴールディを迎えてこの“Dream Evil”を発表するのだが、前3作と比べてセール
スも振るわず、後にロニー本人も『DIOらしくなかった。クレイグはRAINBOWを再現しようとしていた。女性が
泣く時のことを歌ってみようかと思った私も間違っていたんだ』とクレイグ・ゴールディに責任をなすりつけて
後悔していたし、ジミーやヴィニーも先述のBURRN!誌のインタヴューでヴィヴィアンとやっていた当時を
懐かしむ内容と“DreamEvil”アルバム製作時のクレイグの即興性の無さと、ロニーに取り入るのが上手い
姑息な人間性の問題を指摘してあまり良いことを語っていなかった。そんな事情もあってか一般的には評
価の低いこの“Dream Evil”だが俺はDIOの全作品の中でも1・2を争うほど好きだ。1曲目のNight People
からエンジン全開にDIO流のメタルが炸裂する。思わず首を振り、サビの部分“な~~~いっ!ぴーぽぉぅっ
~~!!!~”で一緒に叫んでしまう同志も少なくないのではないか?(俺だけ?)まさに王道DIO節の
②、③、⑤、中途半端にポッピーな⑦、⑨ これこそが様式美バラードのお手本たる④等々まるで隙がな
い。(捨て曲がない)これはジミー・ベインの作曲能力の貢献度もあるとは思うが肝心要のクレイグの貢献度
も非常に高かったと思うのだ。後にツアーを手伝ったりアルバム“Killing The Dragon”ではルックスも性格も
良いとメンバー全員が絶賛するダグ・アルドリッヂがアルバム製作を手伝ったが、(実際にはロニーやジミ
ーが切望するダグ加入はWHITESNAKE(デヴィッド・カヴァデール)に阻まれ実現しなかった。)
そのダグが弾いている9thアルバム“Killing The Dragon”やヴィヴィアンの弾く初期3部作と比べても決して
聴き劣りすることは無い。劣るどころか寧ろ曲間で随所に聴くことの出来る高音のフレットをカリカリ引っかく
ようなクレイグの粘っこいソロはロニーの声質と良く合っていたように思う。
それなのに・・・あぁそれなのに時流の流れから取り残されたという点よりも、DIO流音楽が既にウケなくなっ
てしまったという点よりもクレイグ・ゴールディのせいでDIO人気が落ちたとばかり騒がれ、(嫌ですね?現実
逃避って)ロニーはその後ギーザー・バトラーやトニー・アイオミ等とBLACK SABBATHを再結成するもの
のこの再結成SABBATHでも似合わないモダンヘヴィネスに接近してしまったせいか、その中途半端な音
楽性のせいか新旧両ファンからそっぽを向かれ殆ど話題にならずに終わってしまった。
現在のDIOにはそのクレイグが3度目の復帰を果たして最新作“Master Of The Moon”を発表している。
ロニー御大はとうに還暦を迎えた老人が歌っているとは思えない凄まじい歌唱を聴かせているし、
ブロンドの美青年から不運続きのせいか、まるで泣き出しそうな伊集院光のような容姿に変わり果ててしま
ったクレイグが全盛期の輝きには及ばないものの往年のDIO節を聴かせてくれる。

