じゃあ、このままこの感覚で、歌ってください。
そう言うと、
歌おうとする彼女の身体の動きが止まる。
「自分から、どんな声が出るのか分からなくて怖い。」
彼女はそうつぶやいた。
ミュージカル女優。
ずっと歌いながら生きてきた。
その彼女が、
自分からどんな声が出るのか分からない、と。
これまで歌ったことのない感覚、身体の状態。
喉でコントロールすることができない。
この状態で、どんな声が出るのだろう。
しばしのためらいの後、
彼女は身体に身を任せて歌い始めた。
あたたかくて、深い、
身体ごと包み込むような声だった。
大地から伝わる安心感。
その声は、愛と、平和、そのものだった。
ソプラノとして歌ってきた。
高くてきれいな声だと言われてきた。
その評価に違和感を感じていた。
そんな彼女の、
低音で、深い、心地よい響きの、
力強く、安心感のある声。
その場に立ち会った参加者は、
その歌を聴きながら、
溢れる涙が止められない。
彼女の、
魂に出逢えた。
素晴らしい瞬間に立ち会えました。
素晴らしい歌。
素晴らしい魂。
感動を、ありがとう。
