第2話|英雄の影に立つ大王《おおきみ》、足仲彦天皇《たらしなかつひこのすめらみこと》
第1話|神の声を聞く姫、息長帯姫
力でも、声でもありません。
――神の声を聞くことでした。
里の人々が米が実らぬと嘆いていた年、帯姫《たらしひめ》はまだ十にも満たない子どもでした。
大人たちが天を仰ぎ、神を恨み、ただ手をこまねいているのを見て、姫は静かに言いました。
「水は、山から流れてきているのでしょう。ならば、その水を田へ引けばよいのです」
皆が驚いて姫を見ました。
やがて男たちが山へ入り、姫の言葉どおりに溝を掘ると、乾いていた田に水が満ちていったのです。
稲はたわわに実りました。
また別の年、姫は空を見上げて父に告げました。
「三日後、大雨が降ります。川はあふれます」
人々は半信半疑でしたが、姫の言葉どおり、三日後に空は裂けるように雨を落としました。
川は濁流となり、低地の家々は水に沈んでしまいました。
けれど、姫の忠告で高台へ移っていた者たちは、難を逃れることが出来たのです。
――この子は、ただの人ではない。
そう悟ったのは、父、息長宿禰王でした。
姫の内にある霊の強さは、日ごとに増しています。
――この娘は、その辺の男の妻になるような器ではない。もっと高い位の者のもとへ行く運命だ。
帯姫は、すでに二十五になっていました。
里の娘なら、とっくに子を抱いている年です。
同じ年頃の女たちは、すでに二人三人と子を連れていました。
しかし、当の姫自身は、尊き家へ入ることに興味はありませんでした。
人と話せば話すほど、どこか噛み合わないと感じていました。
(皆が見ている世界と私の見ている世界は、少し違う)
里の娘たちが誰に嫁ぐかで胸を弾ませている横で、姫はひとり考えます。
このまま誰にも嫁がず、神の声だけを聞いて生きるのも、悪くないのではないか――と。
そんなある夜、姫は夢とも現ともつかぬ光景を見るようになります。
夜霧の中に、広い水面。
湖とも海ともつかぬ、果ての見えぬ水のひろがり。
月の光を映して、黒く、静かに揺れています。
その向こう岸に、ひとりの男が立っていました。
高貴な衣をまといながら、ひどく憔悴した男。
顔立ちは整っているのに、瞳の奥に深い疲れと悲しみを宿しています。
まるで、重い石を胸に抱えたまま、遠い岸を歩き続けているような男でした。
姫は最初、その男をただ水越しに眺めるだけでした。
けれど夜を重ねるごとに、姫はその男が、国を動かす立場にあることを知ります。
湖の向こうには、無数の火が灯っています。
人々の祈りと期待と信仰が、星のように集まり、
その中心に、あの男は立たされています――逃げ場もなく。
(あの方は……ひとりなのだわ)
不思議なことに、姫はその男に強く心を惹かれていました。
名前も知らぬのに、ただその憂いに、胸が締めつけられるのです。
そして、ある夜――。
夢の中で、姫の耳に、低く澄んだ声が響きました。
「息長帯姫よ」
それは人の声ではありませんでした。
山鳴りのようであり、海鳴りのようでもある、天と地のあいだから降りてくる声。
「あの男のもとへ行け」
姫の胸が、どくんと脈打ちました。
「汝は、皇后となり、国を導く」
その瞬間、姫の脳裏に浮かんだのは、あの憂いを帯びた男の姿でした。
高貴な衣、疲れた瞳、押し殺したような悲しみ。
(……あの方が、大王《おおきみ》……?)
声は続いた。
「汝の知恵と霊は、天の下を救うためにある」
姫は、息をのみ、しばらく動けませんでした。
自分が皇后になる――そんな未来を、これまで一度も望んだことはありません。
けれど。
あの男の憂いを思い出すと、胸の奥に、静かな熱が生まれます。
(もし……あの方が、ひとりで苦しんでいるのなら)
自分にできることが、あるのではないか。
夜明け前、姫はひとりで外に出ました。
東の空が、わずかに白み始めています。
姫は、胸の前で手を組み、そっとつぶやきました。
「……神よ。
それが定めなら、私は――逃げません」
そのとき、どこからともなく、風が吹きました。
まるで、姫の覚悟を確かめるように。
姫は、まだ知りません。
あの夢に現れた男こそ――
即位して間もない大王、
足仲彦天皇《たらしなかつひこのすめらみこと》であることを。
こんばんは。
いつも読んで頂きありがとうございます。
今日は、少しあらたまってのお知らせがあります。
このたび、
神功皇后(息長帯姫)を主人公にした歴史小説の連載を、スタートすることにしました。
タイトルは
『神功皇后 ― 海を越える巫女王 ―』
―― 神に選ばれ、運命の渦を行く
古事記・日本書紀、そして各地に残る伝承をもとに、
「神に選ばれた女性、息長帯姫(のちの神功皇后)が、どのように皇后となり、国を導いていくのか」を、
物語として描いていきます。
●神の声を聞く姫
●英雄・ヤマトタケルの影に苦しむ大王
●二人が運命に導かれ、結ばれた先にある物語
記紀と伝承をなるべく忠実に取り入れてながらも、創作を交え、その間にある「人の心」を、大切に書いていきたいと思っています。
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🗓 更新予定
📖 小説:週1回/毎週【火曜 21時】更新予定
第1話
▶ 「神の声を聞いた姫」
は【2月3日(火)21時】公開予定です。
いつもの4コマや日記とは少し違う、
“物語”をお見せできる連載になると思います。
よろしければ、ぜひお付き合いください🙇♀️
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また、このブログでは、
📚 古事記・日本書紀や伝承の世界を、
できるだけ「わかりやすく・楽しく」伝えるために、
4コマ漫画を週1で連載しています。
✔ 神話や古代史に興味はあるけど、難しいのはちょっと…
✔ 登場人物が多くて混乱する…
そんな方にも、クスッと笑いながら読んでもらえる内容を目指しています。
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🗓 今後の更新予定
🖼 4コマ漫画:週1回/毎週【金曜 18時】更新予定
これからも、
・日本書紀4コマ
・神功皇后の小説
・現地取材や伝承レポ
この3本柱で、古代日本の世界を発信していきます。
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✏️現地取材や伝承レポ
については、より濃い内容のものをお届けする為に、しばらく準備期間とさせて頂きます。
全体的な更新頻度は下がることになりますが、より読み応えのあるものが提供できるよう頑張りますので、
今後とも、どうぞよろしくお願いします🙏✨✨
皆さま昨日は沢山のお祝いの言葉ありがとうございました![]()
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さてさて、今日の記事は、まだ終わっていなかった旅の思い出振り返り。
武雄市で泊まった宿について。
佐賀県武雄温泉 大正浪漫の宿 京都屋
佐賀県武雄市武雄町武雄7266-7
1910年(明治43年)創業という、100年以上の歴史がある旅館です。
私がチェックインした時は最初このスペースに誰もいなくて、私が独占。
こういうコーヒーマシンあると良いよね。と思ってネットで調べたら売り切れてました。
素敵!おしゃれ!嬉しい!
これだけでかなりテンション上がりました。
ひとしきり写真撮ってほっとひと息ついていたら、他にお客さん来たので、ほどほどの所でこの空間を出ました。
他にも、1階には見どころ沢山。
オルゴールです。
エレベーターもオシャレ。
部屋はこんな感じ。
私は大体いつも、どこかに旅行するときは安く済ませる為にとビジネスホテルかドミトリーにばかり泊まるのですが、ちょっと良い宿はやっぱり良いですね。(といってもそんなに高いところには泊まっていませんが…。)
特段「朝食付き」というプランでもなかったのですが、無料でちょっとした朝食の提供がありました。
パンとサラダとドリンクが頂けます。
パンがオシャレに並んでる~。(すでに他の人達が取った後だからスカスカな状態になっている。)
宿のアンティークからして思っていましたが、ここの宿の方のセンスが好きですね。
室内と露天風呂とサウナもあって、とても気持ち良かったです😊
お湯単体で見ると嬉野温泉の方が、美肌になりそうな滑らかさがあって好きでしたが、お風呂全体の雰囲気はこちらの方がくつろげて良かったです。
夕方、夜、朝の3回入りました♨️
以上、武雄編も終了!
嬉野温泉の武雄温泉も満喫した、良い旅行でした♪























