ご訪問いただきましてありがとうございます。

ニックネーム 私のモノガタリ様 企画の読書会課題図書『きみと泳ぐ夏色の明日』(永良サチ著 スターツ出版)
の読書感想文です。

 まず表紙のイラストに注目。
 眩しい太陽の光が水面で反射しながら深いプールの水槽の底を照らし、水中で手を繋ぐ高校生男女が微笑ましい
雰囲気で、光が差し込む方へ向かって浮上している(ように見える)。

 読む前から、仲良くなった男女のハッピーエンドを想像した。この想像は大いに心地よい。
私は水中が好きですから。
潜っているときの浮遊感、刺激の多い外界から隔離されて保護されているような安心感が好きなのです。
 それは人間は、胎児の頃母の子宮の中で羊水の中に浮いていたからなんていう人がいるかもしれないけど、
子供の時、水に潜れるようになった頃から、不思議さと安心を同時に感じ取れる摩訶不思議な魅力的なところ
なのです。

 間宮すずは、子供の頃、川遊びで弟の海斗の溺死に遭遇してから二つの大きなものを失ないました。
愛する弟と、泳ぐことへの愛着です。

 両親の悲しみの原因を作ったことについての罪悪感と、弟を失った喪失感で、特に夏は重苦しいやり場の
ない閉塞感に囚われるすず。

 読み始める前の、予想した清涼感溢れる場面はどこに現れるのか、間宮すずは、どんなことでもとのすずに
復活できるのか、、のシーンが待ち遠しいこと❕

 この物語には、底意地の悪い人はほとんど登場しません。
みんないい子、良心的な大人たちです。

だから時には素直になれないすずの言動があっても、周囲の者たちの温かさで、どうしようも
ない空気にはならず、どこかで救われるだろうという安心感が漂っています。

これがこの物語の一番の読後感ではないかと感じてます。

 すずは自分を助けて弟が溺死してから、現実にはいられず、辛い現実から保護された水の中にいたの
ではないかと思いました。

 大好きな水の中で、こころは悲劇の一瞬で止まったまま。
それを水面の上の現実まで浮上させることができるのは、海斗が憧れた須賀恭平のみ。
 須賀は偶然の事故で肩を痛め、全国大会出場を危ぶまれるほどでしたがなんと、記録を更新して
全国優勝。
 すずを思う気持ちが、須賀を勇気づけます。人は守るものがあると強くなれると言います。
また、弟の導きかもしれない。
いいお話です。

 現実にもありそうです。
人は無心になり、誰かを純粋に好きになれると、きっといつの間にか光が来る方へ浮上する
のかもしれません。
 
水の中が好きな者たちが心通わせる、なんとも爽やかで、暑い夏に清涼感を漂わす素敵なお話で
あったと思います。