ワンダフルワールド -2ページ目

ワンダフルワールド

宇宙系エッセイスト/スターシード/エンパス/チャネラー/50代/KIN167音11青い手赤い地球/3歳年下で舞台監督の夫と息子3人/家族とのワンダフルな日常を綴ります。

正月休み、我が家に夫のお姉さんたちがやってきた。

末っ子長男の夫にはお姉さんが3人いる。

大阪に住んでいる2人のお姉さん家族とは、毎年盆と正月に集まり、にぎやかに過ごしているのだが、初めてうちの廊下に飾っている絵について聞かれた。

それは、友人が描いてくれた息子の絵だ。

 

息子は中学1年生だった。

夏のある日、夕飯の食卓で息子が餃子を頬張っている。

「明日、俺頑張る日やねん」

鯉のように口をはふはふさせている。
明日の5、6時限目に水泳大会があるらしい。

全学年がクラスを縦割りにして、チームを作っているそうだ。
「俺、上級生とクラス対抗リレーに出るねん」
息子は、小鼻を膨らまし興奮している様子だった。

運動が苦手な彼は、中学に入るタイミングでスイミングスクールに通い始めた。

幼稚園児しかいない初級クラスで、息子は白くてまるい体をばたつかせ、沈みそうになりながら懸命に泳いでいた。

翌朝、私はいつもより大きなおにぎりを息子に食べさせた。


夕方、スマホが鳴った。

電話は担任の先生からだった。
息子はまだ帰っていない。

受話器の向こうで先生が話し始めた。


休み時間に息子が職員室に駆けこんできた。

頬が紅潮し、耳の縁も赤く染まっている。

「水着を間違えました」と言う息子に先生は、「休んでもいいよ」と答えたそうだ。

少し考えて、息子は、「この水着で参加させてください」と言った。

先生は、堰を切ったように話し始めた。
 

始業のチャイムが鳴った。

生徒たちがぞろぞろとプールサイドに集まり、クラスごとに固まって座る。

息子はクラスメイトの影に隠れて小さくなっていたそうだ。

体育の先生が、マイクを持って「整列!」と声を張り上げた。

生徒たちは静かに広がり、先生の号令に合わせて準備体操を始めた。

競技が始まった。

各種目の個人競技が終わり、団体競技が始まる。

プログラムの一番最後で、最も盛り上がるリレーに息子はエントリーしていた。
最後の種目に出る選手の名前が、3年生から順に呼ばれた。

息子のクラスの3年生は水泳部のキャプテンで、2年生にはサッカー部のストライカーがいた。

彼らの名前が呼ばれるたびに、「うぉーっ」と歓声が上がり、プールサイドがどよめいた。

クラスの期待を一身に背負い、彼らはコースに集まってきた。

息子の名前が呼ばれた。

「はい」と返事し、立ち上がる。

プールサイドが一瞬静まり返った。

みんな何も言わずに静かに息子を見た。

濃紺のセミロング丈の水着の中で、ただ1人鮮やかなロイヤルブルーのビキニパンツをはいた息子が立っていた。

太陽の陽が校舎の窓ガラスを一斉に照らし、白くて丸い息子を見下ろしていた。

息子は少しうつむき、唇を噛みしめながら頬で笑った。

すぐに顔を上げ、背中を左右に揺らしながら、自分の泳ぐコースに走って行った。


私は、スマホを耳に押し当てたまま目を閉じた。

先生の話に相槌を入れながら、息子を思う。

 

「がんばれよ!」

同じクラスの3年生が叫んだ。

第1泳者の息子は、コース台の上に立った。

スタートのホイッスルが鳴り、勢いよくプールに飛び込んだ。

「ウォォォォー!」

歓声が水の上でぶつかり、舞い上がる。

息子は4人中3位でバトンタッチした。

その後、先輩たちの頑張りで1位になった。

プールから上がった3年生が、息子のところにやってきてみんなに聞こえる大きな声でこう言った。
「お前、かっこええな」
見ていた生徒が拍手した。

息子は顔をゆがませ照れくさそうにうつむいた。

私は、息子が恥ずかしい時にやる顔だ、と思った。
先生の話しが終わり、私はお礼を言って電話を切った。
息子の好きなホットケーキを焼くために台所へ行く。

フライパンの上でケーキの表面に気泡が出始めた時、玄関のドアが開いた。
「ただいまっ」
息子の声だ。
「ちーちゃん、俺、失敗した」
息を切らして、台所に駆けこんできた。
照れくさそうに丸い顔をゆがめている。

日焼けした頬と耳がサクランボみたいに赤く膨らんでいた。






最近入会した「スターシードオンラインサロン」で、「アカシックに潜る」という無料の体験会があった。

私はYouTubeを見て、アカシックレコードという言葉は知っている。
上手く説明できないが、ずっと、「自分は、なんか人と違う」と感じていて、それが過去生と関係があるのなら聞いてみたい、と思い、会に参加した。

 

その日、私は緊張していた。
スターシードの人たちとの会話についていけるのか、気になっていたのだ。
しかし、会を企画したあゆみさんは、とても気さくで感じの良い人だった。

当たり前だが、参加した人もみんな素敵な人だった。
いつの間にか、私の心配は吹っ飛んでいた。
柔らかいあゆみさんの声に導かれ、みんなで「宇宙の図書館」の入り口まで進んだ。
そこから、1人で中に入る。
私は受付にいる司書の女性に、名前と生年月日を告げアカシックレコードを受け取った。
幼児の絵本のような四角い本だった。
受付の奥には、ホテルのラウンジみたいなソファーや椅子が置かれている。
私は椅子に腰掛け、本を膝にのせ表紙をめくった。
これまで感じてきた「なんか違う」という感覚と、過去生との関わりについて聞いてみる。

 

本の中は真っ暗だった。
上も下も横も後ろも真っ暗だ。
(これ知ってる・・)
私は以前、「宇宙にいるような体験」をした時のことを思い出した。
「今は、宇宙じゃなくて過去生を見たいんだ」と思うが早いか、目の前に満点の星が現れた。
少しがっかりしたが、私はぼんやりと星を眺めていた。
その時、視線の端に銀色の物体が浮かんでくるのを感じた。
そちらに目をやると、先の尖ったスプーンみたいなものが見える。
目を凝らしてよく見たら、顔だった。
真っ黒で切れ長の目がついている。
私は自分の目と似ている、と感じた。
そこから首がのび、手足が生え、人のような形になった。
彼女の全身は、光沢のある銀色をしていた。
表情を読めないのに、人のようなぬくもりが伝わってくる。
私は、この宇宙人に興味が無いわけではなかったが、もう一度、「過去生との繋がりを知りたい」と意図し眉に力を入れた。
ふと、耳の後ろから女の声が聞こえてきた。
「それ、アタシやねん」
振り返ると、さっきの宇宙人がいる。
目だけの顔から、申し訳なさそうな感じが伝わってくる。
私は宇宙人が大阪弁を話したことに驚き、目を丸くした。

 

幼いころ、私は両親や周りの大人から、「いらんこと言いな」とか「目つきが悪い」とか「いちびり」とか「しにくい子や」とか「神経質」などと言われていた。
自分では面白い、と思ってやったことが受け入れられず、「ふざけるな」と叱られたり、叩かれたりした。
怒られないように周りを気にしていると、「目つきが悪い」と注意された。
小学校では授業中、先生から廊下に立たされたり、チョークや黒板消しを投げられることがあった。
同級生から仲間外れにされたり、学級会の議題になって、「私のどこが悪いのか」をクラスで順番に発表されることもあった。
もちろん、嫌なことばかりではない。
ほめられることも、ふざけて笑ったり、いたずらしたり、時間を忘れて走り回ったこともある。
だけど、「何であんなことされたのだろう」と首をかしげるような思い出の方が多い。
しだいに私は、人からどう見られているのか、が気になって、みんなと同じように振る舞うようになった。
その時の心の傷が、大人になった今でも「生きづらさ」として残っているのかも知れない。

 

一瞬で、私は全てを悟った。

 

あの宇宙人は私だ。
今までのことは、私が地球に来る前に、全て「アタシ」が決めてきたのだ。
目の前に、「辛い体験をした時のちーちゃん」がいっぱい出てきた。
私は、その子たちを抱きしめた。
みんなで泣きながら笑った。
銀色のアタシが、そばで心配そうな様子で立っている。
私は彼女の手を引き、輪の中に入れた。
彼女を、「銀色のちーちゃん」と呼ぶことにした。

旅の始まりは2021年6月22日、コロナ禍の緊急事態宣言が解除された二日後だった。

 

正午過ぎ、私は歩いて15秒足らずの職場から昼休憩を取るために帰宅した。
リビングには夫がいた。
高血圧の夫は、3ヶ月に1度病院で血液検査を受けているのだが、その数値で気になるところがあったらしく、朝一番に大きな病院で再検査を受けてきた。
私は台所へ行き、有り合わせで食事を作りリビングに戻った。
食卓に皿を並べながら、私は夫に声をかけた。
「検査、どうやった」
「うん、飯食ってから言うわ」
「かまへんよ」
私は、コップに水を注ぎ夫と自分の前に置いた。
「癌やて、腎臓癌、ステージ4」
夫はひと息でそう言った。
「へぇ」
私は声を出した後、何を話したのか思い出せない。

 

夫と出会って24年、私は夫に守られて生きてきた。
夫を信じきって、夫に頼りきっていた。
すっかり安心していた私は、何の前触れもなく、突然、深い穴に落っこちてしまった。
「何で落ちてるの?」
人ごとのように言いながら、私は落ちている。
なかなか地面に着かなくて、「なるようにしかならんか」とつぶやいたら、腹が据わってきた。
そういえば前につらいことがあった時、どん底まで落ちたら、その後すーっと浮き上がって、気持ちが楽になったことがある。
あの時と一緒だ。

私は深い海の底に沈んでいく自分を想像し、全身の力を抜いた。
沈むに任せながら、私はこの暗闇から二度と抜け出せないかもしれない、とも感じていた。
ふと我に返った時、私の顔はぬれていた。あとからあとから涙があふれ出す。
再び目を閉じた。

夫に甘え過ぎた。
夫の病気は私のせいだ。
私が夫に無理をさせたのだ。
病気に気づいてあげられなかった。

 

私は真っ暗な海を、さらに下へと下りていった。
(どうしよう)
前の年コロナ禍の影響で、緊急事態宣言が出される前から、夫の仕事は減っていた。
舞台監督である夫の業界への支援金は、驚くほど少なかった。
「お父さん一生懸命働いていてきたから、ゆっくり休んだらいいよ」
なんて軽く言っていたら、夫は本当に働けなくなってしまった。
治療費はがん保険で支払えるが、大学生と高校生の息子がいる。私の給料では全然足りない。
夫や家族を支えなければならない、という重圧が私の肩にのしかかってきた。
「心配ない、あんたと息子くらい私が養うから」なんて言えなかった。
夫の病気を知る人から、「旦那さんのこと、守ってあげてね」と言われるたびに、私だって守ってほしい、と言いたかった。
「旦那さんの看病に専念して」
そんな言葉を残して、私の周りから人が居なくなるように感じた。
自業自得だと思う。人とつきあうことが苦手な私は、普段から人を大切にしていなかったのだろう。

(あとどれくらい‥)

「うん?」
私はふいに、自分が沈んでいないことに気がついた。
「海じゃない」
もっと大きな、とてつもない所にいる。
上か下か横か斜めか、どこを向いているのかわからないくらい、大きな闇の中にいる。

(え、宇宙?)
私はぽかんと首を傾げた。
「そら足つかんわ」
納得したら笑けてきた。
馬鹿でかい、宇宙のどこかに私はいる。
子どものころ百科事典で見た宇宙は、星が輝いてきれいだった。だけど、今、私が放り込まれたそこは光の無い世界だ。
誰にも見つけられないであろう真っ暗な宇宙で、私はゆっくりと動いている。
いや、よく見たら物凄い速さで進んでいた。

私はやっと自分の置かれている状況を理解した。
「上等!」
誰に喧嘩を売っているのか、とことんやってやろうという気なった。

どれくらい時間が経ったのだろう。
向こうの方に黄色い点のようなものが見える。ぼんやりと小さく光っている。
「やっと終わる」
私は、直感した。

現実に戻ってきた。
私は、息子たちとほこりにまみれて大掃除をしている。リビングではつけっぱなしのテレビから、1年を振り返るニュース映像が流れていた。
画面を見てぎょっとした。あれから1年半の月日が流れていた。