山形県
むかし。
いまの山形県鶴岡の城下に大場宇平という侍がおりました。
ある日のこと。
仲間寄り合いから帰る途中のことでした。
まもなく。
自分の家が見えてくるというところふと顔を上げると
自分の家が見えてくるというところふと顔を上げると
向こうからなにやら行列がやってくるのが見えました
よく見るとそれはみな白い着物をきたお弔いの行列でした。
そのお弔いの行列は
話し声ひとつたてず
ただただぞうりの音だけが静まり返って夜更けのまちにひたひたと響いているだけでした。
「はて・・・かような(こんな)夜更けに弔いとは妙な・・・・」
「しかもこれは武士の弔いのようじゃが・・・・」
「藩中で不幸があったという話は聞かなかったぞ・・・」
「もし。これはどなたのおとむらいかな?」
大場は行列のひとりをとめて話しかけた
「お馬廻り二百石。大場宇平さまのお弔いでございます・・・」
そう男はつぶやいた
「大場宇平・・・拙者の弔いじゃないか・・・!」
大場が振り向くと行列はピタリととまってじいっとみなこちらを無表情で大場のほうが見ていた。
大場はゾッとし背筋が凍りついた。
怖くなった宇平は家まで駆け出した。
自分の家の前まで来ると
自分の家の前にはいつ今しがたお弔いの送り火を炊いたあとが残っておりました。
「お伽!おみつ!新之助!菊はおらぬか!だれもおらんのか・・」
宇平は聞こうとしましたが家のなかには誰もおりません
「これはいったい・・どうしたことだ・・」
宇平はわけがわからず途方にくれるばかり・・・とりあえず家を出た
いえを出るとあてもなくさまよい歩きました
いつの間にやらさまよい歩いてやってきたのか宇平はお城のお濠端(ほりばた)にたっておりました。
「大場どのではござらぬか?かような時刻にいかがなされた?」
「横山殿・・・・・」
宇平は崩れるように安堵にかられ横山にすがりついた。
やっと話せる友人の武士に出会ったのだった。
声をかけてきたのは親しい横山太左衛門という侍でした。
これまでのふしぎないきさつをすっかり話して聞かせた。
そしてふたたび太左衛門をつれて自分の屋敷まできた。
すると・・・・
なんとあかりがついておりました
「おかえりなさいませ」
なんと・・・宇平がなかに入ると使用人たちが右平の帰りを待っていたのです
聞くと、なにごともなく帰りのおそい宇平を心配して待っており
みんなずっと中にいたといいます。
宇平はまるで狐にでも包まれたかのように恐ろしくなりただ呆然とするだけでした
これにまた宇平は凍りつき背筋がぞっとした
そしてその時は宇平の思いちがいだということで太左衛門は右平をなだめて帰ることにしました。
太左衛門にしても、宇平がうそをいっているとは思えませんでした。
かといってたしかめる必要もなくうやむやに幾日がすぎていきました
かといってたしかめる必要もなくうやむやに幾日がすぎていきました
そして・・ある朝のこと。
「ごめん。横山太左衛門はおられるか」
ふたりの武士が太左衛門の屋敷に訪れた。
「朝はようから何事じゃ」
「お休みのところまことに申し訳ござらぬ・・・実は夕べ、夜遅く。大場宇平が亡くなられたのでその旨(むね)知らせにまいった」
「大場宇平どのが亡くなられた?」
大場右平は夜中に屋敷に押し入られた山賊にあっけなく切り殺されたのだという
そのわけも犯人もわからぬじまいでした
太左衛門はあのふしぎな行列のことをまだ誰にも話していませんでしたが
それは心のすみに妙にひっかかっておりました。
弔いが終わり墓場に行く間もあの行列の話は太左衛門の頭から離れませんでした
そんな時です
「もしこれはどなたのおとむらいかな」
「大場宇平さまの行列でございます」
「いま訪ねたのは誰だっ?」
声に気がついたハッとした横山は怒ったように話していた男を尋ねた。
「え?そこのお侍さまで・・・」
「どこの?」
「ほら・・そこの・・・・あンれぇ?・・・・」
「確かにいまあそこに・・・・・」
「大場宇平が見たというのはこの行列のことだったんだ・・・・」
大場宇平は生きている間に本当に自分のお弔いを見てしまったでした。
むかし山形県鶴岡であったというふしぎなお話です。