中国地方広島県の昔話
昔、安芸と備後の境に峠があって、そこに一軒の茶店がありました。
茶店の老夫婦はとても仲が良く、
夫婦になって50年二人きりで茶店を切り盛りしておりました。
婆様は
「私がもし、先に逝ってしまったら、焼かずに棺にいれて押入れにでもしまっておいてください。爺さんとずっと一緒に居たいけぇ」と爺様に頼みました。
婆様はそれから一年後にちょっとした流行風邪をこじらせて、
3日後にぽっくりと亡くなってしまいました。
爺様は、約束通り婆様を棺にいれて押入れにしまいました。
その晩から、押入れの中から
「爺さん、おるかい?」と婆様の声がするようになりました。
「爺さん、おるかい、爺さん、おるかい」と夜な夜な夜になるとその声は毎日聴こえてくるようになりました。
怖くなった爺様は茶店から逃げ出しいくつもの峠を超えて逃げました。
しかし婆様の声はどこまでも追いかけてきます。
「爺さんおるかい爺さんおるかい」
「じいさんあんたはなぜ逃げなさる?私をおいて逃げなさるんか?」
「じいさんおるかい?」
ひゃあっ!たまらずじいさんは荷物も捨てて一目散に命辛がら逃げてきた。
そしてある一軒家の男の家に
「匿ってください、お願いしますいれてください、ある怖いものに追われています」
と助けてもらった。
じいさんは、押入れに隠れたものの押入れをどんどんと叩くものがいます
「開けちゃダメだ」
必死で戸を抑えるが
「じいさんおるかい!」ばあさまがここまで追いかけて来た。
じいさんはそのショックで死んでしまった。
しかし、実際叩いていた人はその家の男の人だった。
「これ、旅の人旅の人~大丈夫か?」
男はびっくりしてじいさんを起こしたがじいさんは起きなかった。
そうして気づくと、婆様と一緒に三途の川にいました。
爺様は「わしはまだ生きたかったんじゃがなぁ」
と思いながらも嬉しそうな婆様をみて、
仕方ないかと諦めて閻魔様に会いに行きました。閻魔様は爺様を見ると
「お前はまだ10年生きることになっている」
と、多少困った顔をしたそうだ。
前歯3本を抜いて娑婆(しゃば)に戻してくれました。
「あと10年たてばお前はまたここへ来ることになっているで、
それまでたっしゃて暮らせ」
その後、約束の10年がたちました。
爺様は今度はちゃんと寿命をまっとうして死にました。
閻魔様は爺様の事を覚えていて、爺様に極楽行きを告げました。
爺様が極楽へ向かう道の途中で、一軒の茶店に立ち寄ると、
「この茶店は、ずっとあるのですか?」
「へえ・・・・・この茶店は10年前に閻魔様に作ってもらったんですよ」
と懐かしい声がした。
振り返ったじいさまはびっくり。
あのばあさまだったのです。
「じいさま!今度こそ一緒になりましたね」
「また一緒に暮らせるね」
そう感激の再会を果たした二人は感激のあまり抱き合って喜んだ。
満足した閻魔様は「これにて一件落着、次ィ!」