石川県
金沢の町はずれに小坂の伝燈寺(でんとうじ)という寺に
活道和尚(かつどうおしょう)という坊さまがいました。
ある身も凍るような猛吹雪の夜、
じいさまが小さな孫を連れて逃げ込んできました。
「和尚様、どうかこの子を助けてやってくだせえ。
狼に襲われて、足を噛まれました。」
小さな男の子が狼に襲われたので祖父に吹雪の夜、命からがら寺に助けを求めてきたのだった。
「この寺には2匹のコマ犬が守ってくださいるという話だそうじゃが・・」
このコマ犬はかつては木彫りが丹念こめて作られたコマ犬で、実体化して襲いかかってきた狼たちを食い殺したという伝説があった。
和尚はつぶやいた。
「あれは伝説の話だ。こんな伝説にすがってくるとは・・・子供よの・・・」
孫がオオカミに襲われて怪我をした、
このままではオオカミに血の匂いをかぎつけられて狙われてしまう、と言う。
そとをみると夥しいばかりのおおかみどもの群れが待ち構えるかのように待機しており目をらんらんと光らせておった。
そしておおかみどもの群れはすこしずつ、子供の怪我をした血を狙って、迫ってきているのだった。
おおかみどもは、血の匂いを嗅ぎつけてどこまでもおってくるという。
和尚様は言い伝えにしかすぎないと思っていたが、
ひとまず孫を預かってじいさまを家に帰した。
そして先頭の叫び声を合図に、オオカミの群れはすさまじい唸り声をあげ、
神社に向かって襲い掛かってきた。
猛烈な勢いで突進してくるおおかみどもは、本堂に体当たりして攻撃してくる。
「よいか。わしまのいう通りにお経を唱えよ。良いな。」
「・・・・はい。」
すさまじい音をたてて、本堂の入口がいまにも破壊されそうになる。
和尚と孫は、恐怖に震えながらもコマ犬にすがる思いで、「南無阿弥陀仏」を唱え始めた。
小さな孫が「こまいぬさま~~~!」と叫んだ。
その時、狛犬に積もっていた雪がザッ!と崩れ落ちた。
その瞬間、コマ犬が目をらんらんにかっと目を見開いたかと思うと、
獅子の姿へと実体化した。
実体化したコマ犬は、まるでもののけの如く、
猛烈な勢いで、おおかみたちを攻撃していく。
そしてものの数分で次々に噛み殺していった。
やがて夜明けが訪れ、和尚様が恐る恐る外に出てみた。
「ああっ!!」
和尚はそとの様子に恐怖で凍りついた。
そこには不意打ちを食らったおびただしい数のオオカミの死骸が累々と
散らばっていた。
そして、口を血で真っ赤に染めた狛犬が朝陽に照らされていた。
すさまじいその光景を朝様子を見に来た村人たちは無言のまま驚くしかなかった。
この動きだすという伝説の2匹の狛犬は、今も金沢の三河神社に祀られているという話だ・・・・・。