富山県
ナレーションが最後だけ登場するという異色の話。
(物語はナレーターがなく突然おじいさんのセリフが始まります。)
(遠く黒部が見える山々の背景に遠く聞こえる鷹の声)
(やすけじいさんの語り)
「黒部の渓谷はの・・・・
飛騨の山を真っ二つに割って・・・下っておるんじゃ・・・。
流れの源には・・・夏でも雪がとけねえそれは険しい山がある。
鬼のように立ちはだかっておるんじゃ。
頂きには・・・いつものように雲がかかっておって、わしら木こりでも
めったに入ったことがねえ・・・。
そんな厳しい山じゃからだからこそ、
猟をするにはとってもいいんじゃよ。
獣もたくさんおるでの~
わしら・・・キコリでも時には猟に出たんじゃよ。
あるときは獣7匹あまりとったこともあったぞ。(笑い声)」
やすけじいさんが淡々と話し女が黙ってそばで聞いている。
そこへかかあがおにぎりめしをもってじいさまのところへ入ってきた。
かかあが入ってくる。
「おじいちゃん。ここにおにぎりおいておくね。
・・・・・・?
誰かお客でもおると思ったんに・・・・・。」
人の気配がしたが、女の姿はなかった。
やすけがまだ若い時。
やすけは怪しい女に頼まれた。
「あなたはやさしい人・・・・あの柳の木は絶対に切らないでほしいのです。どうか・・・お願いしましたよ。」
やすけは息を飲んだ。
それから、
木こりの仲間と木を切っているときに
「あの柳の木を切るなと女に言われた。もしかすると柳の木の精霊かもしれない」
と話すと、相棒は、
「そんなもんおれは信じねえよ~迷信が怖くて、きこりがやってられるかい。」
とせせら笑って相手にされなかった。
そして、その日棟梁たちと大勢で柳の木を切ることになってしまった。
やすけが、女のことを思い出したとき女の姿が浮かんだがすっと消えた。
「あの女だ!まて!切るな!切るのをやめてくれ~」
とやすけが止めに入り叫んだが、
大木である見事な柳の木は大きなバターンという音を立てて
あっけなく切り倒されてしまったのだった。
やすけじいさんはまた話しだした。
「恐ろしいのはその夜のことじゃった。。。あのときのことは忘れられねえ・・。」
やすけは恐ろしいものを見てしまったのでした。
夜遅く。やすけは何かの音に目が覚めたのだ。
昨夜の女が音もなく入り込んできた。
その光景は女が15人の仲間のきこりの舌を一人ずつ口で吸い取り殺して
やすけ以外のきこり全員皆殺しにしたのでした。
「・・・・!舌を抜かれている・・・」
気が付くと女がやすけのすぐそばまで来ていて
らんらんとした恐ろしい目と口に血をつけたあの女だった。
恐ろしい形相で睨んでおりました。
「あなたに頼めば・・こんなことに、こんなこにはならずにすんだものを・・・・」
その表情は恐ろしくも、怒りに満ちていました。
やすけは怖さのあまりとっさに山刀で女の体を切りつけました。
女は悲鳴をあげ倒れ込んだときやすけは恐怖のあまり
小屋から一目散に逃げて逃げて里まで逃げ帰ったのだそうです。
(やすけじいさん語り)
「おらあ・・・・怖くて怖くて・・・無我夢中で里まで逃げ帰ったんじゃ」
すべてはやすけじいさんの若い時の思い出話でした。
この話を淡々と、だまってきていてる女にずっと聞かせていたのでした。
またかかあが、「おじいちゃん、おにぎりもってきた・・・・ひゃっ!
じいさまの・・じ、じいさまのし、し、舌がない・・・・!」
やすけじいさんの表情はどこか恍惚としていてなにかいいたげな表情をして舌を抜かれて死んでいたそうです。
この事件があったことからこの谷を「一六人谷」と呼ぶようになったそうです。